第7話にじゅうよんさい

「えっ、15歳?」

東堂が目を丸くした。


「……うん」

わたしは洗面所に駆け込み、全てを悟った。悟りたくもないのだけど。

UFOを信じるタイプじゃないのだ。相当頭がいたい。


「そ、そんなことってあるの?」

「ある…みたい。」


今わたしは就職していて、東堂と同棲している。らしい…


髪も伸びていて染めてある。身体も大人のものだ。

15歳のわたしの顔と身体とは思えない。


「あのさ…聞いていいかな」

「なに?」

「東堂今何歳?」

「24…」

「24…てことはわたしも24?!」

すごく疲れた。

こんな事があるものなんだろうか。


「はぁ…なにこれ」

「なんだかよくわからないんだけど、15歳のきみが今いるってこと?」

「そう…」

「15から24までどうやって…?」

「知らないよ!」

記憶喪失になるような事故にはあっていない。

「うーん…なんだろう。」

疑っているのか、東堂は目を合わせてくれない。

「こんなの嫌だ…」

思わず漏れる。

大人になりたいとは思っていたけど、初キスをも勝手に済ませてしまうなんて、なんて罪なんだろう。


「わたしの9年間どこにいったの…」

病院に行ったところで治るものではないだろう。半ば諦めていた。

「うーん。きみの話がほんとうなら、今きみが好きなのは僕じゃないね」

「えっ!」

「あれだろ、茶道部…」

「久城先輩?」

「別に言わなくても…」

東堂がそっぽを向いたまま、口を尖らせた。

「そこは別にどうでもいいよ。そんなに本気じゃないし」

「えっ」

東堂はひどく傷ついたような顔をしたあとに、深く息を吐いた。

「まあ、いっか」

小さな声で、そう言った。


「あのね。24歳のわたしどけど…15歳なわけよ…助けて!東堂!」

こうしてわたしは24歳として生きる事になった。

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