第3話 さどうぶ

「おわったぁー!」

ホームルーム終わりのチャイムと同時に伸びをする。

「疲れた?えみるん」

かよちゃんがわたしの机に顔を乗せる。

「つかれたよぉー…」

「部活行ける?」

「かよちゃん優しすぎる!いけるよー!」

「よかった。じゃあ、いこうか!」

「うん!」



茶道部の部室は、2階の端っこだ。

「うわぁー、なんかふんいきあるねー」

「そうだね…和風感が漂うよね…」

部室のドアに<茶道部 部員募集> と書いてある紙が貼ってある。


かよちゃんが前に出る。

「おはようございます。友達を連れてきました」

「おじゃましまーす…」

「わあ、いらっしゃい!私は部長の蒲谷です。よろしくね。ありがとう、花房さん」

「いえいえ」

かよちゃんがにっこり笑う。

「部長さん!よろしくお願いします…あの、入るか決めてないんですけどいいですか?」

「いいよいいよー、ゆっくりみていってね。」

部長さんはいい人そうだ。

「他に先輩は、久城先輩と百田先輩、弓削先輩がいるよ」

奥から男子がでてきた。

「久城です。よろしく。」

うわっ…すごい。

思わず溜息が出そうなイケメン…

「よ、よろしくです」

黒髪で優しい笑顔。好きになってしまいそうだ。


「百田ですーよろしくね♪」

その後ろからツインテールでふわふわ髪の先輩が出てきた。

「お願いします!」


「弓削です、名前は?」

「えっと!えみるです」

「えみるっち!よろしくぅー」

なんだか茶道部っぽくないと思ってしまう。

アシンメトリーのショートヘアに、さりげかない星のピアス。バンドのボーカルをしていそうな感じだ。


部長の蒲谷先輩とかよちゃんはともかく、他の3人はなんだか派手なタイプでいわゆる地味で文化系という感じは全くしない。

「他の部活は見た?」

久城先輩が微笑む。

「あ、はい!吹奏楽部と演劇部を」

「あぁ。なるほど。文化系がやりたいのかな?」

「えっと…そうですね。スポーツは苦手で…」

「得意そうにみえるよ」

「ドジなんです!わたし…」

「そっか。たしかにそう見える。」

「えっ!」

もしかして久城先輩っていじわる…?

「顔に意地悪って書いてあるよ」

「えっ、そ、そんな」

「ちょっとクジョー!やめてよ新入生に…」

「ごめんね」

部長さんに窘められ、久城先輩はくすくすと笑う。

こんな人だったなんて…アリだけど!


「あれ?そういえばかよちゃんしか1年はいないんですか?」


部長さんが顔を曇らせる。

「あ…ええ…そうなのよ…」

「ギリギリ、なんだよね、うちら…」

百田先輩も苦笑いしている。


やばい。まずいことを聞いた?!

「えみるっちー、どうすればいいかなー?」

弓削先輩が上目遣いでこっちを見る。

「え?!えと…」

久城先輩が顔を近づけてくる。

「とにかく、入ろうか?」

心臓が跳ねる。


「えっ!は、はい!」

「やったー!!!」

「えみるん、本当?!」

…しまった。勢いで。


こうしてわたしは茶道部の一員になったのだつた。

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