生か死

 俺は朝からとある生き物と対峙しているこの牢獄生活で一番楽しみな時間にこいつは現れた。長い触覚にツヤツヤした黒い体で俊敏な動きをすることからみんなの嫌われ者ゴキブリ《黒い悪魔》である。現在の状況はトマトスープが占領され残ったパンをどう救いだすか模索中。これ以上被害が拡大すると食べる物が無くなる為、早急な対処が必要なのだが神越も無いしましてや殺虫剤なんてチート武器もない。

 

「くっそー!まさかここでラスボス級モンスターに遭遇するなんて運無さすぎるだろ!」

「おいうるさいぞ静かにしろ!それともうすぐアラウド王と面会がある覚悟しておくのだな」


 王が居るという事は王国なのか面会と言う名の裁判だろうな多分、どうか俺が笑ってしまう様な見た目ではありはありませんように手を合わせながら祈っていると兵士が呼びにきた。


「面会の時間だいいか?くれぐれも無礼のない様にな。妙な真似をすると貴様の命はないぞ」

「わかってます」


 諦めずに色々試しが結局ゴキブリは対処出来ずパンは諦めた、まさか監視の人でさえ顔を青ざめさせるなんて流石ラスボス級威圧感が尋常じゃなかった。

 牢獄を出ると壁に廊下は走るなと張り紙がしてある、こんなに無駄に長い廊下だ過去に最近少し太ったからと走ってダイエットしている奴がいてもあまりおかしくないだろう。


 そして、曲がり角を何回曲ったかわからないがようやく王のいそうな部屋の扉が見えてくる当然見張りもいた案内してくれた兵士と敬礼すると扉が開く。

 シャンデリアで照らさた石造りの二階建て真ん中にはレッドカーペットがしかれ左右を兵士が並んでいた、そして金色の元いた世界では絶対売れない玉座にアラウドは座っていた。 


 恐らく50代位だろうかもみあげから顎まで伸びた茶色い髭、体つきは当然俺よりいい服の上からでも日頃の鍛錬がわかる程に筋肉質である事がわかる。なにより目を引いたのが獣のような耳が頭に生えている事だ人間ではない…つまりゲームで言うなら獣人なのだろうか冠も付けていなかった。

 すると、神越を持った兵士が俺に差し出してくるとアラウドは名乗る。


「我が名はサイティキア王国二代目の王アラウド・クラウン。初めに手荒な真似をした事を詫びようすまなかった。刀はそなたに返すとして何故あの様な事が起きたのか説明してもらおう」

「理由は簡単でこの刀を奪おうとしてきたからです。ゆえに葬りました」

「ふむ……成程かといって切り捨ててよいものではなかろう?話し合いをすれば良かったのではないか?」


 確かにそうだ早とちりしすぎたと反省している、確かに話てみると意外と良い奴で仲良くなれたかもしれない一緒に世界煙突ツアーも夢では……それは夢でいいや少なくとも牢獄行きはなかったかもな。何故かあの時は躊躇なく切ったのにも関わらず複雑な気持ちになっているとアラウドが提案してくる。


「まぁ今更どうこう言っても仕方あるまい、かといってこのまま黙って帰す訳にもゆかぬ。そこでその刀の切れ味がいかなるものか見せてもらおう」


 アラウドが手を叩くと兵士が手枷のされた長身の男を連れてきた切れ味を試すとなると大体想像はつく、このラーメンが好きすぎて髪型も麺みたいにしちゃいました!と言わんばかりの縮れ麺の様な髪をした男と戦う事になるのだろう。

 更に二本の剣を持った兵士がやってきて俺と男お互いの手枷を外す、あれまさか神越で戦えない?仮にそうだとしたら間違いなく勝ち目はないんですけど…だがどうやら違ったらしく怪人縮れ麺男が二本とも持った、俺はそれを見て失礼な名前をつけつつ胸を撫でおろした。


「そやつは名をシュバルツ・シュタイン二本の剣を使い巧みに戦う一流の剣士と言えよう。だが酒に酔って人を殺めおった当然死刑を言い渡したその執行日が今日なのだ、そこでそなたに執行役を頼もう負ければそなたは死ぬ、勝てば生き残り罪は問わぬ」


 遠回しに死刑判決されたよな俺、まぁ不幸中の幸い神越は戻ってきたし生きれる可能性があるなら選択肢はただ一つ。


「生きれる可能性があるのなら俺は戦います」

「うむ。良く言ったでは始め!」


 とは言ったものの相手は一流プロ実力差は歴然。例えるならカップ麺とプロが作るラーメン位に差があるだろう、普通なら真っ向から切り合ったら間違いなく勝負にならない。今まで何人殺してきたのだろううかシュバルツの目は狂気に満ち溢れていた、流石に焦る煙突やろうとは格が違う額から滲み出た冷たい汗が頬をつたうがこのまま棒立ちでは死ぬだけ、どうせ一振りで終わるんだと神越を振るが空間は歪まず地面も切れていない。


「嘘だろこんな土壇場で普通の刀に戻るなんてあんのか!?」

「道ずれにしてやる……死ね小僧!」


 シュバルツが切りかっかてきて更に焦り汗が滝の様に流れ出す。普段使わない頭をフル回転させどうしようか考えていると、当然シュバルツが止まり周囲を見ても兵士を含め動かなくなっていた、まさかこの人達乾電池仕様のサイボーグがなにかだったのか?いやでも今どき乾電池は流石にないか。死を直前にしてもくだらない事を思っていると聞き覚えのある声が聞こえてきた。


「若造久しぶりじゃの元気にしとるか?」

「その声……誰だっけ」

「無礼者めが!誰がその刀を授けたのじゃ!」


 怒鳴り声が頭に響くあまりの声量にあたまがいたくなりそうだった。しかし、なぜここまで大きなこえを出てているのにも関わらず姿が見えないのだろう、全く不思議な事ばかりおきて脳内処理がおいつかないもう少し考えてほしいものだ。


「あぁじぃさんかなんでこの人達動かないんだ?」

「時を止めておるからじゃな。教えることはせんぞ卑怯者めが」


 何故か心を読まれた確かに時を止められれば最強だろと少し思った事は認めよう正直教えてくれと言いそうになったし、だが今は何故神越が切れなくなったのかを聞きたい気の利くじぃさんは教えてくれた。


「お主の心が乱れておるから切れんのじゃ神越は平常心であればあるほど切れ味がます。要は今のお主はこの世界に来た時より心が落ち着いてないと言う事なんじゃよ」

「こんな状況で平常心な奴の方がおかしいだろ無茶言うな」

「なら死あるのみじゃな健闘を祈っておるぞ、それとわしは死んだのでな会うことはないじゃろう」


 そう言って声が聞こえなくなると時が動き出す、俺は一か八かじぃさんの言うことを信じてみる事にした深呼吸をして心を落ち着かせるこれで切れなければ俺は死んで人生は終わるだろう。


「頼むぞ神越。俺はお前に人生を賭ける」


 肩の力を抜き一振りする。すると、前の様に空間が歪みシュバルツは俺に剣を振りおろす事なく床に落とし血飛沫をあげ絶命した。どうやら平常心なほど切れると言うのは間違いではないらしい今回は真っ二つになっていた。


「この借りはもう返す事はできないがありがとな。じぃさん」


 こうして俺はを勝ち取った。

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