秋 弐

 どうも私は、秋になると書きたくなるらしい。何か秋の空気とでも言うようなものが、私の感受性に作用するのか。

 去年の今頃も、秋について雑文を書いた。それも二本。何の益にもならぬものであるけれども、あれはあれで楽しく書いた。あれから一年、高校を卒業して新しい環境に身を置くなり、色々と忙しく、キーボードに向かうという行為を趣味として行う時間が持てなかった。あるいは書くという行為は、私にとってはその程度のモノであったのかもしれない。

 今年の秋は突然、寒さがやってきた。ここから冬へと急降下してゆくのであろう。秋というモノは、やはり茫漠としていて掴みがたい。しかし、この掴みがたさ、不確かさが私に書くことを誘うのかもしれない。

何の為に書くのか、ということを考えてみる。もう、小説家になりたいなどという淡い夢を抱くこともなくなってしまった。お金になるわけでもなく、誰か読んでもらいたい人がいるわけでもない。昔は文章を褒めてもらうことが嬉しく、ただその為だけに書いていたが、プライドの高い大学生の集まりの中で、その様な安直な期待が実現されることは希である。現実に直面したとき、それを乗り越えることなく屈してしまうのは、やはり才能の欠如が故であろうか。

 ともあれ、この秋に対する言い知れぬ愛慕というものを、形として表してみたいとは思うのである。ただ紅葉の中にだけあるのではない、食物の中にだけあるのではない、姿形は無いが確かに厳然と存在している得体の知れない秋というモノを描写したい、今はただその思いだけが私の中に存在している。

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