031 湯気の中からこんばんは 後編(視点:ジュリアン王子)
「ゲヘンッゲヘン、ケホ、ケホ、、、ふうぅ、もう大丈夫だ。す、すまなっ、かった、ありがとう」
「まったく、ジュリアンはやんちゃな子供なんだな。いいか、そもそも湯船の中は走りまわっていい場所ではないんだ、これで危険なことはよくわかったな?」
僕はコクコクと首を縦にふって相手にわかったと伝える。
「わ、分かった、これからは走らな、、、えっ?」
そしてようやくに相手を見ると、そこには意外になる人物が僕の前に立っていた。そこにはなんと生まれたままのハルカの姿があった。いや、ここは浴場なのでそうした意味合いではおかしくもないとは思うけれど、男の僕に見られていても平然と恥ずかしいと思うこともなく仁王立ちの構えをみせていたのだ。
ヤンチャな弟がまたしでかしたといったように、ヤレヤレとその腰に両手を置きながら。
お風呂の中に四つん這いになっていた僕のすぐそばで。
「ひぃいあああッ、のわのわっわッーーーーーー!!」
女の子の裸を見てパニックになったのは僕のほうだった。驚くあまりに僕はその四つん這いの体勢から仰向けにひっくり返ったと思うと、今度は超人的な速さで両手足をシャカシャカと器用に動かして、ハルカから距離を取ろうと必死になって全速後退をすることになった。
「なんだ、もうそれだけ元気に動けているのなら、ほんとうに大丈夫そうだな。驚かせたようだけどここにいるのはジュリアンの婚約者の特権とゆうやつだからな。オッサンに聞いたところによるとこれからお前はホテルと都市庁舎の往復になるそうだから、そうなるとこれからはちょくちょくとここに通わせてもらうからそのつもりでな。さーて私は戻って体を洗わせてもらおうかな」
そりゃ驚くのが当たり前だろ!
僕(男)が入っていることを知っていてわざわざ入ってくるハルカ(女)の存在にな!
未だにバクバクとして心臓がうるさすぎて喋ることもままならなかった僕を尻目にして、ハルカは浴場から洗い場のほうへ出ていってその体を洗うためにゆうゆうと帰っていった。
「フーン、フン、フン、フーン♪」
ハルカはときおりにご機嫌の鼻歌を歌いながら首の周りから肩に両腕、前の体、お腹、両足といったぐあいに順序でゴシゴシと石鹸とスポンジを使ってきれいに洗っていく。ハルカは体を隅々までよく洗い終わってからお風呂に入るスタイルであるようだ。みるみるうちにハルカは背中を除く以外はモコモコの泡に包まれていった。
「ああ、そう言えばジュリアン。さっきは大きな声を出してたしか私の背中を洗うって言っていたよな。ちょうどいいから遠慮なくここへ来て私の背中を洗ってくれるかな」
「あ、それは、そのう、、、ええと、、、いや、なんだ」
ハルカの声がこの浴場の反響を介してよく響いてきた。対する僕はモゴモゴと小さな声を出していてなんとか断る言い訳をあれこれと探しているうちにもうハルカの近くまでついてしまっていた。
とゆうかなんなんだ!
この男女二人だけといった裸の状況下でノーリアクションだなんて普通ならありえないだろっ!
「ほら渡しておくぞ、これスポンジな。私の体はお前と比べて小さいのだから気合を入れてあまりこすり過ぎるなよ。いっておくけどお前におんぶされたときに背中が大きくて安心したなんて思ってもいないからな。ほ、ほらはやく受け取れ」
ハルカはその会話で顔を赤らめた顔をしたのでハルカも人並み程度には恥じらいを感じることができたのだなと安堵をしたけれど、それよりもっとも基礎となるべき男女間での恥じらいがないことには未だにまだ気づいてない様子だった。
と考えているうちにハルカは僕にスポンジを受け取れとばかりに半ば強引で手の中にそれをねじ込んできた。ただのスポンジのはずなのにそれはほんのりと温かくてその直前まで女の子が使っていたというだけでそれが特別な物のように感じてしまった。
このスポンジはいままで、女の子の肌と触れ合っていたものか、、、
ハッ! 僕は今なぜ、こんなことを思ってしまっているんだっ!
くっハルカの小悪魔めっ! これはただのスポンジだ、ただのスポンジ、ただのスポンジなんだ、ただのスポンジ、、、
「ハハ、でもジュリアン、お風呂に入った親しい者同士が背中を洗いあう習慣があることをよく覚えていたものだな。それとも王族ではもう普通にあることなのかな。だったら遠慮なく始めてくれ」
スーー、ーーン。
悶々とハルカを異性と意識する僕にこの切り返しで僕はようやくに悟ってしまった。ハルカは僕のことを異性として捉えていない、こいつの頭の中では同性ということなのだ。だから平然として背中を洗えなどと言っている。それによくよくになって考えてみるとハルカはまだ10歳の子供だ。
いや10歳なら普通は異性に恥ずかしがってもいい歳だとは思うけど、僕の聞いた噂話では父親といつまでも入りたがるような女の子も広い世の中にはいるそうだし、人のそれぞれの環境次第で恥ずかしくなる年齢も多少は異なってくるのだろうか個人差があるといえるものなのかもしれない。
そう考えるとハルカに対してこれまでドギマギしてた気持ちも落ち着いたが、しかしふと頭の中をべつの考えがよぎると昂ぶりは先程よりもアゲアゲとしていった!
そう。男であるならばこの状況をみすみす利用しないでいるなんてやつは実に馬鹿げたやつとしか思えない。相手がたとえツルベタといえども女の子が裸になって平気で僕の目の前にいるのだ。しかも本人はその身体を見られたりしても何も恥ずかしくないということなら、ゼヒにゼヒにじっくりと見させてもらいたいっ!
コ、コホン。
いや違うんだ。
これはあくまでも、お風呂での礼儀を尽くす、ただそれだけのことだ。普通で当たり前のことを当たり前にして何が悪いというのだ。
グビリ。
その緊張からなのか、僕は大きく唾を喉に飲み込んでしまった。
「よ、よし、わ、わかった」
俺はハルカに平成を装って躙りよるとその背中にスポンジをのせた。
そして、見るっ!
ウハ、これが背中。先ほどよりも泡も少なくなってきていてよくみえた。
これまではじっくりと見ている心の余裕さえなかった。
非常にもったいないことをしたっ!
すっげぇー白い肌。おや、つるんつるんのプヨプヨとしているぞ。
これはこの手で直に触ったらその触り心地も良さそうだ!
、、、 、、、 、、、
うっかりと間違えて、触っちゃっても、き、気づかれないよね?
ど、どうせ触るのなら。
スポンジを持たない僕の手はハルカの胸部へと伸ばされていく。
フウ、フウ、あとほんの少しだ、、、
その手の指先が触れるかほんのわずかに触れるか触れないかの、まさにその時ーーー
ガラ、ガラガラッ、
浴場の扉が再びに開く音が聞こえてきた。
入ってきたのは父上とロイスの二人だった。
入ってくるなり、父上とロイスはその現場を見てあんぐりと口を開けて唖然となった。
自分を見るとイスに座ったハルカの背中で両膝を折って胸部に手を回してこれからいたそうとした状態である。
「あ、オッサン、、、お風呂にお邪魔してまーす」
ハルカは入ってきた二人にのんきな挨拶をしていた。
のわわわッ、ハルカァァッ!ーー!!
父上とロイスの前でお前はなぜ平常運転のままでいられるんだぁぁぁーーーーーーー!!!
「ほほぉ、なるほどな。婚約発表をしたとたんにお前たちはまたずいぶんと急に仲良くなったものだ。ジュリアンお前がうぶとなるハルカ嬢をこうして誘ったのだろう。いやまったくこうまでお前が手を出すのが早いとは思っても見なかったぞ、、、今度は男同士のナニの話でもしてみるか?」
父上がニヤニヤとして僕を見ている。
ち、違うんだーーー!!
そもそもはハルカのほうが勝手に、僕のいる浴場に入ってきたというのにっ!!
僕はこの急展開にアワアワとまごつくばかりだ。
「お坊ちゃまがハルカ様をお気に召してすぐにお手をつけられてしまわれるそのような方だったとは。いやはやこれまでの爺の目はとても節穴でございました。これからはより積極的にバックアップをさせていただきますぞ」
だああああっ!!! 違うぞ!
まてまて待ってくれっ!
もう勘違いの上積みをしないでくれーーーー!!
「あそうか、わかったぞ。ジュリアンが年上だから先に背中を洗わせたいのか。よーしそうなら、ほらジュリアン、私がお前の背中を先に洗ってやろうじゃないか。さあここに座ってこちらへ背中を向けろよ」
ハルカはそう言ってから自分の尻をこれまで置いていたイスに、僕を座らせようとして僕の背中に回って押した。
え? 今まで女の子が座っていたそのイスに?
僕はまた劣情が起こりそうになったが、この状況でそれは実にヤバイッ!
父上を思わず見てみると、その様子をロイスと一緒にニヤニヤとした楽しそうな笑顔でみている。
あ、、、これは最初から二人に担がれたんだなあと、このときに僕は思い当たったのだった。
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