005 ダメなんじゃね




(((ぎゃわわわひゃあああ、ハ、ハダカだぁ!!)))



俺の前に現れた女性は腰に小さな布を残している以外は裸となっていた。がしかしその状況をよく見ると先ほどにタライとタオルで沐浴の準備をしていた若い女性がその衣服を脱いでいたのだとわかるようになった。



チャプチャプ、チャプチャプ。



ギュギュギュ、ギュギュ~~~~



フキフキ、フキフキ、フキフキ




若い女性は身体のあちこちを丁寧に拭ってタライの水にときおりタオルを浸してからこれを絞って身体を拭くことを繰り返ししていた。こちらを気にするそぶりもないのは俺の意識が失っていることに安堵している故の行動なのだろうか。




女性が裸になる理由を知ると俺は安堵となる溜息を口元から漏らした。そうか、俺だって沐浴する場合は裸にもなるしこれは何もおかしくはない。



男女に関係なくこのような行為は普通にしているもので何を恥じらうことなどあるものか。ってあれ? そうだとすると俺は何んで騒いでいたんだろう?



(んー、、、)



(むむ、、、 、、、ハッ!)



(((そうだ、オレはオトコだったーー!!!)))




(異性同士がそれも若い男女が同室っておかしいだろ! なんなのだこの部屋は!)




それに今さらよく考えてみるとこの部屋ってみんな女性(包帯グルグル巻きは性別不明)なのか。ゲゲゲ、この中でどうやら俺が異分子のようだ。



あ!! もしかして体が動かないのもそれが原因なのか。犯罪が起こらないようにと俺の布団の下にはひょっとして拘束具がつけられているとか?



いやいや、さすがにそれはありえないだろう。身体の不自由さと声が出せないことはそもそもが別物であるはずだ。だとすると俺の体はやはり異常事態になっているのだ。




あれがこれがと思案顔を俺がしている内に若い女性はこちらをついと見たときに眼と眼が偶然に重なり合ってしまっていた!




(((み、見つかった! こんどこそ言い逃れができない!!!)))




明日の新聞に「白昼に勇者ハルキが女性の裸を覗く行為!」と見出しを飾るスクープ記事が載る様子を思い浮かべていた。



故意はなく事故だったとはいってもこれは勇者ハルキ側の明白な失態である。もしかして夢見での異世界の別れはこのことを暗示していたのかも知れなかった。




(おしまいだ。もうどうともなれ、、、ゴクリッ、、、)




一息を飲んで女性の出方をさらに伺っていた俺だったが、驚いたことにその女性は優しく手を振ったたけでまた何事もなかったかのように、身体をまたせっせと拭い始める作業に戻っていた。




(あれれ??? てっきりと騒がれるかと思ったのだけど、、、ふいい。どうやら助かったようだ、、、)




しかしこの結果はどう考えてもおかしかった。男性である俺が女性の裸を見ていても悲鳴一つあげてこないなんて。






「あ、目がさめたんだね~、お早うさんだよ~」



俺がパニックを引きずっていると、それは思わぬことに自分の近くから声をかけられていた。その声は間伸びをしたホンワカすしたものだった。



その声の方角と距離から考えると隣のベットだったはずだ。自分の視線を移してみるとそこにいたのは最初に俺が見た人物、読み物に耽っていてベットの上で正座をしていた女子だった。



彼女はふわ毛のやや赤みのある髪で顔の両頬には彼女がまだ成長期である証のソバカスが残っていた。体の全体の線などは女性がそれを主張するのにはまだ控え気味ではあるが、バストは標準値よりも明らかに大きめであると立派に主張をしていた。




俺が口をパクパクとして言葉が出せないジェスチャーを見せると、ひょっとしたら声が出せないの? 体は動かない? と次々と質問してきたので、俺はそれにひとつひとつ首を縦にコクコクとこれに頷いてみせた。




「そっか~、とりあえずは私の自己紹介をしておくね~。名前はシエルっていいます。私はいま16歳なんだよ~」



声を出そうとして絞り出してみるもやはり声は出てこないようだ。なので俺は諦めてシエルとの会話は首を縦か横に動かす合図をとることにした。



合図を受け取るシエルは、具合は大丈夫なの? と聞いてきたので了解のサインを出すと、それじゃあもっと話すぞ~などと言ってきた。




「まずは~あれ? あなたのお名前がわからないけどどうしよっかな~ とりあえずは~銀髪ちゃんでいいのかな?」



そう俺の髪はなぜなのか銀髪なのである。異世界を渡ってきたら何故かこうなっていた。前にどこかの神殿にいる高位の神官の記錄官が教えてくれたけど、こちらの世界にやってくる異世界人は銀髪となる人が多いということなんだそうだ。



そしてそれはどちらかというと白髪に近いものだ。プラチナ色と言えばわかりやすいかもしれない。とにかく色素が薄いのである。とにかく今は余計な話だったな。




「それでね銀髪ちゃん。あなたはな~んと10日間ものあいだ意識がもどってなかったんだよ~ "もうダメなんじゃね"ってセンセイもそう言っていたんだもの。でも意識が戻って本当に良かったね~ ワーイ パチパチと拍手だよ~」




(ええええーーーーーー10日も経っていたなんてッ!)




ウッハァァァ。でもそれほど長い間に意識の回復がなかったのだとしたら、確かにそりゃ誰だって匙を投げだしたくもなるよ。




、、、あれ?



いまセンセイって、シエルは言ったのか?



するとここは、、、ああ病院なのか。






この部屋にいる人たちをよく見ると、たしかに皆、病院で支給されている寝間着の格好の人ばかりだった。そうか、それで中には全身包帯巻きの人もいたわけか。これでこの部屋の状況も合点がいったよ。



そうするとここは、どうやら戦時下での野戦病院ということになるのかもしれない。平時などとは違うことなどから男女別に収容ができないことだって考えられる。



なによりいままでの俺は昏睡の状態が長い間経ってしまったので、この女性部屋に移されていたのかもしれないのだ。




さきほどの女性をなんとなくみると今度はタオルを乳房の下の脇に移動をしていた。うわーあんなに勢いよくプルプルと揺れるものなんだ、生乳。



ああそういえばその感触がまるでマシュマロのようだって誰かが言ってたっけ、、、



、、、 、、、



((って、チチがッ~ウーーー!!))




みたらダメだろッ! 俺は勇者なんだぞッ!

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