またしても小話


 最近の流行りと言いますと、自分で撮った写真をスマホやネットで公開するなんてことをしている人がいましてね。

 インスタントなんちゃらってやつですよ。そのサイトで見映えするような写真をとりたいって、若者だけじゃなく高齢者がハマっていたりしているようです。

 綺麗な景色、美味しそうな食べ物、かわいらしい雑貨、それはもう多種多彩な画像で溢れかえっております。




「よっ、旦那! ご機嫌ですねぇ!」


「なんでぇ、ロクかい。俺のどこが機嫌よさそうに見えるんだ」


「なんと言いますか、いつになく頬に赤みもありやすし、肌のツヤも良さそうに見えたもんで」


「ああ、そりゃ機嫌の問題じゃねぇな。これは『バエ』させるためにやったんだ」


「ばえ? ばえってなんのことです?」


「わからねぇのか。バエっていったら『公開絵映え』のことだろうが」


「公開絵ってぇと、最近流行っているご近所同士で絵を見せ合うってやつですかい?」


「金を払って似顔絵や風景を絵師に描いてもらうんだ。ただ似顔絵は出来映えを良く見せるために、あらかじめ顔に色を塗ったくるのよ」


「はぁ、そうですかい……いやいや旦那、言ってる意味がよくわかりませんって。なんで顔に色を塗ることになるんです? 後でここをこうこう赤くしておくれって言えばいいでしょうに」


「金がかかる」


「へぇ?」


「金がかかるんだよ。完成した絵にここうこうこう赤くしろってぇと、追加で金を取られるんだ。だから顔に色を塗ったくっていたんじゃねぇか」


「難儀なもんですねぇ」


「うちのかかぁがどうしても二人の似顔絵が欲しいって言うからよぉ」


「かわいいおねだりじゃないですか。そりゃ、言うことをきいちゃいますねぇ」


「あとが怖いからな」


「それで、絵の出来映えってやつはどうなったんですかい?」


「おう、見るかい? これだよ」


「へぇ、どうも、これは……」


「綺麗なもんだろう」


「へぇ、もう、お綺麗なもんで……」


「なんて顔をしてやがる。綺麗なもんを見せてるってぇのに」


「旦那はどこにいるんです?」


「いるだろう。こっちだよ」


「お二方とも女子(おなご)に見えますがねぇ?」


「そりゃお前、絵師が『男なんか描いたって楽しかねぇよ!』って言いやがるから、じゃあ女の格好すればいいんだなって、かかぁのを借りてだな。これもバエさせるためってもんだ」


「バエさせるのも大変なんですねぇ……でも、さすがにこれを赤の他人に見せるのは恥ずかしいもんでしょ?」


「いや、そうでもねぇな」


「さすが旦那、豪気だねぇ」


「豪気なもんか。安いからって皆この絵師に頼むんだよ」




おあとがよろしいようで?



……オチが弱い。難しい。

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