彼女は天使だった



僕が女の子と初めて手を繋いだのは16歳のとき

ではなくて

実は 5才のときだった

保育園のお昼寝の時間に寝息をたてて眠っているクリーニング店の娘の左手を

こっちも一応、目をつぶりながら右手で握ったんだ

握ったあとも彼女の寝息のリズムが変わらないのを確認してから

ゆっくりと目を開けたんだ


そのとき 確かに

彼女は“天使”だったよ




僕のファースト・キスは17歳のとき

ではなくて

実は 4才のときだった

手を繋ぐのよりも早いってところがどうかと思うけど

彼女は大抵 華奢な体にロングドレスを着ていて

大きな付けまつげをつけて歌っていた

ちょうど ♪歩いても~歩いても~小舟のように

のサビのところから顔がアップになるから

♪ゆれてあなたの腕の中~

のところで

白黒のブラウン管に ブチューって


そのとき 確かに

彼女は“天使”だった


けど

僕のくちびるは静電気で大変なことになっちまったんだ



「ブルーライト・ヨコハマ」

なんでだろうね 

なんだか口ずさんじゃったんだ 今日



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