25 基地で見かけた女の子

 米軍基地のある町で、裏道から大通りに走り抜けようと、ちょっと、ディープな香りのする小さなバーの立ち並ぶ小道に車で入り込んだ。

 まだ昼前で路地はジッと静まり返っていたが一軒の店だけ大きく扉が開いていて、 パンパンにはち切れそうな肉感的な若い女の子が扉に寄りかかり足で起用に猫たちに餌をやりながら歯を磨いていた。

 今、目覚めたように顔がすっぴんでその佇まいが絵のようで思わずカメラを向けそうだったが…盗撮になってはいけないし…かと言って了解を得れるはずもないし…と思ってるうちに前の車が動き大通りへと車は走りだした。

 一瞬の出来事だったけど、何故か鮮明に覚えていて、米軍基地のニュースが出るとあの女の子はどんな人生を送ったんだろう。

 二十歳位だったとしても、幸せな結婚をしてるかも知れないし、あるいは、アメリカ兵の好い人になって数奇な運命を辿ったかもしれない、なんて…思ったりする。

 あの時、膝の上までカメラ構えじっと光景を見つめたんだけど…

撮れなかった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る