第10話 私は提督ではありません!!

「あら?お出かけかしら?悠太さん?」

「うん、大学に行かないと」

悠太は実は夏美のメールが気になり、夏美と何度かやりとりした後、一度会うことを約束させられていた。ちなみに今は雪子と悠太の二人は同棲している。


「ところで悠太さん、私のことをただのアイドルと思ってもらっては困るのよ?理解しているかしら?」

「雪子さんは僕の大事な婚約者だよ?わかっているよ。愛しているよ……。雪子」

そう言って、悠太は夏美の待つ喫茶店へと向かうのであった。


悠太が家を出ると。雪子は不敵な笑いを浮かべて独り言を言う。

「悠太さん、私はね今はあなたの婚約者であるだけでなく宇宙艦隊の提督なのよ。ふふ、地球に来た宇宙人は一人たりとも生きて返さないわ。」


雪子はすでに、夏美から悠太への、あのキテレツなメールを捕捉していたのだ。

「暗号文を変えたって無駄だよ?」

と意味もなくいう雪子であった。


悠太が家を出てしばらくした時。

「ピンポン」

とインターホンがなる。

「待たせました。こちら第7艦隊工作部。内通者より入電がありました。ターゲットは喫茶店コメットコーヒにて待機中。作戦決行の準備は整っております。提督の作戦指示書へのサインを受け取りにアデルディア司令より参りました。ご英断を!」


そうアデルディア3世の部下であった。アデルディア法律事務所は探偵組織も持っており秘密裏に夏美を監視していたのだ。雰囲気を出したいという雪子のたっての要望により、雪子は地球防衛宇宙艦隊の提督、アデルディア3世は第7艦隊司令、探偵組織は工作部ということになっている。ちなみ夏美のことはというと当然のことながら宇宙人ということになっていた。


「うむ、では作戦『サザンクロス:写真砲十字放火』を発令ス。不埒な宇宙人を一匹たりとも逃すな。諸君らの献闘を祈る!」

雪子はノリノリであった。悠太の浮気の現場を工作員による写真の激写により抑え、不埒な宇宙人つまり浮気相手を撲滅する、という影のプロジェクトである。


「最後の一匹だからと言って気をぬくな!いいな!」と凛々しくいう雪子。

雪子から契約書のサインをもらうとアデルディア法律事務所の職員はいそいそと帰って言った。


「ふふ、悠太さん。地球艦隊の情報収集能力を甘く見過ぎですわ。ダテに長く提督(ストーカ)を私やっていませんことよ。」


今銀河で二つの大きな勢力が最終決戦の時を迎えていた。

雪子提督の率いる第7艦隊が勝つのか?

それとも銀河帝国のエトリシアこと夏美が地球の最後の希望である悠太をホテルで悩殺するのか?


銀河の歴史を見守るのは歴史家の保護観察官一人のみ。

彼女はのちにこう言ったという。

「雪子提督は地球の星には出来すぎた人だった」と。


勝負は混沌とし明確な勝利はどちらも得ることができなかった。歴史書に雪子提督に関する記述が残るのはこれが最後であった。


ー完ー






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