第6話 私はレズではありません!!
JSを騙る悠太奪還作戦も虚しく失敗した夏美だったが、彼女にさらなる試練が襲いかかる。それは……。雪子の指差しポーズで「最後通告よ!異論は認めないんだから!!」という写真の印刷がフルカラーで施された少子化対策庁からの一通の封書の中身であった。
「デートの強制執行か。最後通告って書いてある……。ふぅ。もう、ヤツとのデートをガン無視し続けて1ヶ月になるのね。」
そう、夏美にもマッチングされた相手がいる。その名は。
山岸智、やまぎしさとると言う。
「問題はこの写真よね……」
少子化対策庁が送ってきたマッチングの写真にはどうみても男には見えない男の娘の写真が貼り付けられていた。
そして極めつけは注意書きであった。
※本人は通称として山岸佳乃子という名前を使用。
「……まぁ、行くしかないか。強制執行じゃ。」
山岸智、通称山岸佳乃子との待ち合わせ。
「正直お相手も気が重いんだろうなぁ。」
と夏美は思う。そりゃそうだろ、夏美は男ではない。おそらく相手だって嫌なはずだ。なんとかならないものだろうか。
佳乃子はおしゃれなカフェを待ち合わせ場所に指定してきたのでその場所にジャストの時間に到着。すると、そこには可愛らしい女性にしか見えない智、通称佳乃子が居た。
「初めまして夏美さん、お会いできて嬉しいです。」
佳乃子は礼儀正しくわざわざ席を立ってチョコンと会釈し挨拶する。
「初めまして……。佳乃子さんとお呼びした方がいいですよね?」
夏美がそう言うと佳乃子は心底嬉しそうな顔になり、はしゃいだ声で
「ありがとうございます!!!」
と礼を言う。
「夏美さん、ありがとうございます。嫌われているんじゃないかと心配してました。」
夏美はここはストレートに思いをぶつけるべきだと考え、
「あの。私たち二人とも、この交際を望んでいませんよね?なんとかなりませんかね?」と打診する。
すると佳乃子は首をかしげて。
「なんでですか?私は夏美さんとお付き合いするのはとても楽しみにしてますよ?」
と不安そうに言う。
ぐ、困った。しかし、どういうことなんだ。
「あ、私のこの格好と名前で勘違いされているんですね?実はこんな格好してますけど、恋愛対象は普通の女性なんです。」
な、なんだと。それじゃ両者不服の申し立てもできないのか……。
政府の強制的なマッチングではあるが両方ともその関係を望まないときに限り不服の申し立てをすることができる。まぁ、再マッチングされるかはケースバイケースなのだが。
今回その道も絶たれたか。
「夏美さんはガーリッシュな男は嫌いですか?」
「うん、嫌い。なんかレッツゴーホテルって言う気力が正直なくなるって感じ」
夏美が投げやりに応えると、しばらく佳乃子は黙り、考えた後続ける。
「でも、私、結婚しても清い関係のままでいてもいいですよ。友達と思って、ここは結婚してくれませんか?」
と頭を下げる佳乃子。
ならいいか?結婚しないで済むのと同じだし。と夏美は思い直し、佳乃子との婚約を承諾することにしてもいいかな、と気持ちが揺れるのであった。
「それに私、夏美さんが悠太さんと不倫しても気にしませんよ?良ければ、今度ダブルデートしましょうよ。東京キャットワールドで、みんなでジェットコースター乗りましょう!楽しいです。きっと。」
目を輝かして熱弁を振るう佳乃子。夏美はいつしか佳乃子への警戒心を解き、二人は遊園地の好きなアトラクションの話でキャピキャピと盛り上がるのであった。
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