第3話 私はストーカではありません!!
アデルディア結婚承諾法・専門法律事務所。その代表アデルディア3世。彼はナイトの称号をもつ日本人に帰化した青い目の外国人弁護士である。略してアデル弁護士こそがユキコの誇る凄腕法律家であった。
「とにかく付きまとえってことかしらね?」
「ソノトオリです。男は押すと落ちるね。チョロいよ。」
ユキコは思案する。
「でもでも、ストーカ危険女排除命令で過去捕まった子を私ニュースで見たし。そこまでつきまとったら排除命令出るでしょう。逮捕されたら私お終いだわ。」
そう、今度はストカーとして逮捕、なんて事になったらシャレにならない。
婚期を2度逃し、さらに過酷なマッチングがされるのは想像にかたくない。
「ダイジョウブよ。ストーカ危険女排除法はとっくの昔に事実上廃止されたネ。少子化の原因だってこと、政府の非公式見解ヨ。だから、安心してツキマトウね。場合によっては、女の方から押し倒してしまうぐらいの積極性必要ヨ。」
弁護士は押し倒すのところでオーバーに手を押し出し、その重要性を強調する。
「わかったわ。私彼の前でちょっと意地になりすぎたの。本当はファンだって言われて嬉しかった。でも、昨日までアイドルで手が届かなかった私に、アイツ馴れ馴れしいのよ?」
今更、どの顔下げて素直になれって言うのよ……。全く。
「ユキコ、愛は奪い取るものヨ。ビッチの誘惑に勝るものは正直ないヨ。これは苦しい戦いネ。イイネ。愛があれば何をしても許されるヨ。これがストーカ危険女排除法が廃止された理由ネ。」
アデルディア3世は熱弁をふるって雪子を励ます。
雪子は今までにない闘志が燃え上がった。そして悠太を押し倒すところを想像し、あまりのことに赤面する。身体中が炎がほと走るように熱い。
押し倒して何をすると言うのだ?雪子は男女のあれこれを想像する。
同時に夏美と悠太の事を思い出し、嫉妬に心が押しつぶされそうになる。
でも……。
「ユータの初めては全部私がもらうんだからっ」
と心の中で誓う。
そして、次の日。
その日はデートの日ではなかった。奇襲作戦決行。
「だーーれだ」
と可愛く後ろから目隠しをする。
「え、ナツミ?どうしたの?」
ユウタはユキコの人が変わったようなアタックにも動じない。
正直ユキコはその落ち着きっぷりにイラっときたが。構わずそのまま。
「バンザイして?ね。ね。」
と言う。
「なんで、まぁいいや、バンザーイ!」
ユウタはなんの疑いもなく両手を無防備にあげる。その時だ。
雪子は素早くその手に手錠をかけた。
「ガチャ」
「えっ、ナツミ?」
あまりのことに困惑して転倒するユータ。
「命令よ。その名前は忘れなさい。ユータの心も。体も全部私のモノなの。だから女の子の名前はユキコのだけ覚えてればいいのっ。」
ユキコは真っ赤になりながら、続けて命令した。
「ドライブに行きましょう?」
「ええええ、ドライブ??ていうか、まさかナツミじゃなくてユキコなの?助けてーナツミさん!!!」
車にはアデル弁護士が運転席に座っていた。
「早く乗るネ。青年ヨ。大丈夫。コワクナイよ。用を足したらすぐ、解放するね。」
「イヤーーー。助けてー。あっ、保護観察菅のお姉さん。こいつストーカーです。逮捕してくださいよー。」
だが保護観察官の彼女はただ、頼もしそうにユキコの行為を見守っていた。
「大人になりなさい。恋を楽しむといいですよ。18歳。命短し恋せよ少年。」
「なに言っているんですか、ストーカーですってーーーー」
「あ、その法律は無視していいって言われているからっ」
にっこり。と彼女は満面の笑みを浮かべると。
「頑張って国民の義務を果たしてくださいね。」
と言った。
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