第5

「ローラ、ここにいてくれ、どこにも行くな。局員にならなくてもいいからっ」


「やがみ……」


「お前は人一倍がんばってる。成績が振るわなくても、結果だけを見てお前を除籍にするなんて許せないだろ」


「八神、あの人たち、ホントに大丈夫なの?」


「え?」


「ちょっと焼け焦げてるし、ほとんど裸体だし、顔が紅葉おろしに……」


「あの魔導生物、俺の霊体食って暴走した後、宿主の霊体食ったよな」


「八神、そこ?」


「本来の宿身やどしみってのは、そうはならない。あれはなんなんだ?」


「わか、らない。私は属種が妖魔系だけど、魔導のことはよくわからない。適性はあるけど、態度が悪いって、言われたから」


「態度?」


「あと、八神は誤解してる。私は前期で落第したけど、退学はしないの」


「でも、」


「そう。もうみんなと同じ授業は受けない。実は、休み前の追試結果が出たあと……」






「俺の頭が悪いのかな、ローラの言ってることが全然わかんねえ……。なんでそうなるんだ? その、先生と教室で話したあと、ローラは帰ったんだろ? その時にはもう、弟子なんて務まらないから、辞退するつもりだったんだよな?」


「そうそう」


「で、なんで、次の日、その教室に行くんだよ。先生言ったよな、朝、教室にいたら、弟子にするって」


「忘れてしまったの。すっかり」


「何をだよ?」


「そのへん全部。ついいつも通りに登校しただけなの」


「ローラ……さすがに先生は何も悪くないぞ。お前が勝手にうっかり弟子入りしたってことだろ」


「……ハァ」


「言ったのか? 間違えましたって、弟子は断るって」


「ダメ、だった」


「聞く耳なしか……」


「でもね、八神」


「ウン」


「……先生、教える最後の機会になるって言ってた。もう、どこで自分に見切りをつけたらいいか、わからないの。……だから、先生が手を引くなら、これで最後だというなら諦めもつく」


「お前は俺と同じで、ここ辞めたら他に行くあてないだろ」


「……八神ならどこでもやって行ける」


「俺はここでしかやってけないよ。最後なんて思う必要はないんだからな、ローラ」


「……ありがとう」


「なんかあったら、すぐ言えよ。俺があのふざけたデカっ鼻殴りに行くから」


「先生に勝てるの、八神」


「勝てなくても、一発入れる」


「う〜ん……迷惑」


「ひでぇ。……あ〜あ、グロッケンスピールにローラを取られたみたいで、面白くない」


「……八神は、私のことより自分を大切にして」


「わかってるよ」


「死に急がないで。私やトムを置いていかないで」


「……気をつける」


「それで、どうするの、あれ、あの人たち」


「しゃーねーなー、……おい、しっかりしろ、白目むいてる場合か、風邪引くぞっ! 起きろっ! 霊体消えたくらいで、自失してんじゃねぇ! 顔が削れたままでいいのか!? 立て! お前ら!!」


「……雑」




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