第3

「ローラ! ちぃ、もういねぇ。どこだ、さすがに貼り出し見に行ったか? いや、あいつのうかつさは、予想より上だ。……おい! 誰かローラを見てないかっ?」


「……出て行く時に、トムが蹴散らした三人組に見つかってたよ」


「一緒に歩いてったわ」


「それ、何分前のことだ? どっち行ったかわかるか?」








「トムが手加減したのね」


「あいつが我々に手出しできるものか!」


「あなたたちの方が逃げたのね」


「うるさい、もとはと言えばお前が、魔導部を追放されたくせに、意地きたなく学校に残ってるせいだ!」


「魔導部の面汚しと思い知れ!」


「私、屋上は好きだけど、一緒にいる人は選びたい」


「っ! 無視できると思うなよ、ローラ・ケンハート! お前がいると、我らまで馬鹿にされるんだ、全部お前のせいだ!」


「あなたたちに才能がないことまで?……」


「この、出来そこないの分際でっ」


けがらわしい奴!」


「悔しければ、我らの力に抗ってみるがいいわ。泣かれると面倒だ、口をふさげ」


「暴力、はんた……んぐぅ」


「見えるか、我が右手に宿った紫の閃光が。あの方からもらった魔導生物よ。これにお前の霊体を喰わせたらどうなると思う?」


「気力も体力もなくし、お前の魂を守るものはなくなるのだ」


「魂に直接囁けば、お前は自ら退学を申し出る」


「んんんっ」


「無能は無能らしく、さっさと立ち去るんだったなぁ」


「我が宿し身の力、存分に味わッ……誰だっ」


「ドアを叩いてる! また奴か!? 鍵はかけたんだろうなっ?」


「魔錠をかけたっ、破れば我の蛇が奴の霊体をかっ食らう、ダメでも時間稼ぎにはなるっ、兄者早くしろっ!!」


「よしっ」


「んぐー」


「ぁぁあああ、ダメだ兄者、う、後ろ……扉が吹き飛んだ、我の蛇が宿し身の蛇が千切れてく」


「なんとかしろっ」


「兄者ッ、逃げよう」


「んぐうっっ」


「今、蛇が噛みついた。お前たち身体を張ってでも狐を、」


「何してるピスキ」


「っ、トーマス・クレイじゃ、ないのか」


「ああ。ピスキ、リスカ、ドーラス、お前らここで、いったいっ何してるっ!!」


八神栄やがみ さかえ……邪魔をするな。こいつが元魔導部のせいで、我らまでが陰口を叩かれるのだ。お前らはそうして、あの方に選ばれた我らを妬み恐れるがゆえ、常にさげすもうとする!」


「少なくともローラは、古巣を悪く言ったことはないぞ」


「言わなくとも、存在が面汚しだっ」


「あの方がそう言ったのか?」


「これは我ら魔導部のけじめよ、邪魔するなっ」


「そうはいかない。お前らもローラも、俺の仲間だ。あの方も魔導部も関係ない、命をかける現場に出るため学んでる仲間が、同じ仲間に手を上げている、俺にはそう見える」


「八神……お前のは理想だ、我らはうぬのように強くはない」


「俺を強いってんなら、強い奴の力を使えよ。俺は誰を殴ればいい? ローラを潰せばお前らの気持ちは晴れるのか、悪口言う奴を全員叩きのめせばいいのか、ピスキ、俺を見ろ、本気だぞ、俺がブチのめしたあと、そいつらの前で責任を追求されても、お前やり過ぎたなんて謝罪しないよな」


「や、がみ……」


「兄者、もうやめよう」


「何を、お前たちっ」


「ぶはっ……ぜはー、ぜはー、」


「ローラ、無事か?」


「ありがとう、八神」


「いや。――お前らアレだな、色々溜まってんだろ。ローラはダメだが、俺ならサンドバッグになってやる」


「八神、わるい顔……」


「力を見せつけたいか、八神栄」


「お前らこそ、見たくねーのか? 安全に戦って楽しいか? それ、最近手に入れたものみたいだな、試したいだろ」


「ふん……」


「兄者、我の蛇は八神にほふられた……よくもっ」


「いいだろう、力を試してやる八神。お前の実力は、話しでしか聞かぬからな、どれほどか見てみたい」


「俺もだ、霊体の一つや二つ喰われてみるのも、面白い」


「「加勢するぞ兄者っ」」


「ヒぃぃいいいいい、私、退避、私が退避してからに、」


時すでに遅く、屋上で大気が爆発した。



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