朽ちた街 その3

振り向けば人がいた。

背丈は低く顔立ちもまだ幼いだ。

彼は朝焼けの中で不安そうな顔で白い息を吐き出しながら私へ語り掛ける。


その子ウサギを放してくれませんか?」


私の今までの高まった気分も一瞬で冷めた。

縛り上げた小動物ウサギの足首を持ち上げ私は彼へ尋ねる。


これウサギは君のペットなのかい?」

「……。いえ……。家族です。」


『ケイン! 助けてなのだぁ……。』


よくある台詞だ。だけど「家族」と言う単語キーワードに私は同情したのかもしれない。ウサギの足枷を切外しケインと呼ばれた男の子へ投げ付ける。


[あ~。もったいないなぁ。]

「いいの……ですか??」


残念そうな箱と少々驚いた表情のケイン他所よそに私はナイフをしまう。

胸ポケットから珈琲豆を一粒取出し口元へ捻じ込む。

私自身もこんな気紛れは久々なのだから空腹で狂ってしまったのだと思う。


「君のお仲間に手を掛けるほど我々は難儀してないよ。」

[何でかっこつけてるかな。面食いも程々にしないと餓死すると思うよ?]


別に意味は無かったのだが、箱に言われると何だか腹が立つ。私は箱の蓋を強めに抑え付けリュックの中に放り込んだ。

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