第2話 キラークルの森 ー1

 "ゲート"をくぐると、周りには沢山の木々がそびえ立っていた。

(ここは……。確か、キラークルの森だったか……。ここ、結構迷いやすいんだよなー。飛ぶこともできるけど……。それじゃ旅の意味ないし、目立つし……。ここはとりあえず歩いて行くか)

 せっかくの旅なのだ。なるべくなら、魔法に頼らずに行きたいものだが……。まあ、やむを得ない時は仕方ないが。

 俺はとりあえず歩みを進めることにする。ここは幸い、そんなに強い魔物も出ない所で、新人冒険者にとってはいい狩り場的存在になっているらしい。まあ、そんな魔物が出たところで俺が負けるはずなどないのだが。それにしてもここの空気は美味しいな。魔王城にいた頃の窮屈さとはまるで対照的な解放感。くううぅぅぅーーー!! 抜け出してきて良かったぜ!! もう、魔王城になど戻らない!! これからは楽しい生活を送るぞーー!!

 俺はそんな事を心の中で叫びながらガッツポーズをとる。

 暫く歩いていると、俺は薬草が所々生えているのに気づく。

(おっ……。これは、メラン草か。これがあれば良い回復薬が作れる)

 俺はメラン草の生えている箇所にしゃがみ、何本かメラン草を採取する。他にも解毒作用のあるレコリン草、麻痺を直す作用のあるエギン草、混乱を直す作用のあるファシー草など、色々な草を集めた。

 辺りを見回すともう薄暗くなっており、俺はここら辺で一旦野営をすることに決める。魔法のポーチから、魔物除けの効果がある結晶のついたテントやランプ、食料などを取り出す。まずはテントから組み立て始める……とは言うものの、実際は折り畳まれているのを開くだけなので、作業は一瞬で終わる。俺はテントを開き終えると、その場でランプを点灯させる。とは言っても地面に置いたままでは何かと不便なので、魔法を使って浮かせる。

「"フローティング浮遊"」

まあ、このくらいの魔法なら許容範囲内だろう。

 次に、ポーチからテーブルと椅子、簡易キッチンを取り出し、料理に必要な道具もろもろを出す。簡易キッチンは魔法で動く仕組みになっている。なので、俺は簡易キッチンに魔力を流し込み、必要な食材を選別して、料理を開始する。俺は比較的料理が出来るので多分大丈夫な筈だ。まず俺が調理するのはなんたって肉だ。肉がなくては戦ができぬ!! と言うくらい肉は好きだ。

 まず厚みがある肉を適当な大きさに切る。そして、フライパンに放り込む!! その時に"ルエール"という油の一種をフライパンにひくことも忘れない。こうすることで、肉の中まで火が通り、弾力や旨さが格段に上がるのだ。味付けには"ニルー"という塩コショウの一種を振りかける。よし。これで肉の完成だ。次は、野菜だ。こう見えても俺は健康志向なのだ。食材の中から、"アフェツ"と呼ばれる葉っぱみたいなやつと、"ユニース"と呼ばれる細い茎みたいなやつも皿に盛り込む。そこに"ミーフ"というちょっとさっぱりする味の液体をトッピングする。先ほど出来た肉も皿に物凄い量盛り込む。そして、それらの料理をテーブルの上に並べ、俺は椅子に座る。

「よし。食べるとするか」

 そう声を発し、料理に手をつけ始める。まずは肉から。

「う~~ん!! 旨い!! 肉汁が口全体に広がる……!」

次は野菜を。

「……まあ、普通に美味しいな」

 肉ほどではないが、それなりに味はしっかりしていて普通に美味しい。

 かなり量のある肉と野菜をハイペースで平らげていく。やがて、全て食べ終わると、俺は明日に向けて早めに寝ることにした。簡易キッチンやテーブル、椅子、残った食材をポーチの中にしまう。そして、テントの中に入り、今度はポーチから寝袋を取りだし、寝る準備をする。

(明日はどうしようか……。街には行ってみたいが……。いっそのこと、この森で狩りをして暫く過ごすのもありだな……。だったら、テントじゃなくてもっとちゃんとした拠点を造らないとな……)

 俺はそんな事を考えながら、"仮装魔法ディスガイズ"をとき、普通のスライムに戻ってから眠りについた。

 

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