第6話 再来

 浩太は目覚めると、白い部屋でパイプ椅子に座っていた。


 見覚えのある狭い部屋だったが、浩太はもう身構えることはない。そんな変化を知っているのか、浩太の体は縛られていなかった。


 浩太が立ち上がって振り返ると、そこには見覚えのあるイルカ達が立っていた。


「我々の計画は延期とする」


 予想外の言葉に、浩太はイルカを見つめる。


「なんで延期なんだ?」


「この国には前途有望な少年少女がいる。君達の未来を踏みにじるのは、我々の望むところではない」


 リーダー格の言葉を、インテリ風が補足する。


「君達のような子供が増えるのならば、我々の目的は達成されるのだよ。なぜなら、君達は我々と共存できるような人間である。我々は君達を応援しようではないか」


 インテリ風がそう言うと、次はヤクザ風が続けた。


「これは俺達の計画とは関係ないが、1つだけ聞いてもいいか?」


「な、なんだよ」


「なぜ、お前は――」


 ヤクザ風はたっぷりと間を空けて、浩太の注意を引いた。


「あの状況でチューの1つもできんのだ馬鹿め!」


 思わず顔を染める浩太を、イルカ達は腹を抱えて笑った。


「お、お前らに言われる筋合いはねーっ!」


 リーダー格は笑ったまま、ヒレをパタパタと振る。


「さらばだ」


 その言葉と共に、部屋の光が強まっていく。


 光で部屋が塗りつぶされるその瞬間、浩太はありったけの力で叫ぶ。


「ありがとなっ!」

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