番外編:もしも「チンギス・ハーンⅤ」が発売されるなら

〇「チンギス・ハーン・蒼き狼と白き牝鹿IV」については以下を参照

https://kakuyomu.jp/works/1177354054887044758/episodes/1177354054887097287




〇はじめに

 4が発売されて二十年以上経つが、いまだに私はほぼ毎日遊んでいる。

 私の中では、テトリス、ドクターマリオ、ソリティアのような位置づけのゲームである。

 そんなチンギス・ハーンはコアなファンを持つゲームであり、一部の者は続編の発売を望んでいるが、その希望は叶いそうにない。

 理由は簡単で、対象が中世ユーラシア史のため、売り上げが立たないからだ。

 日本の戦国時代や三国志の時代でなければ、開発費を賄えないのでしかたがない。


 5は出てほしい。

 しかし、私はすでに諦めている。

 だが、遊んでいると、次回作ではああしてほしい、こうしてほしいという考えがあれこれ浮かんでくるので、それを以下に書きつけておきたい。




〇5が発売されるのなら


・基本システム

 基本システムは4を踏襲してほしい。

 改良された4といったゲームが私の希望。

 箱庭システムは絶対に残してほしい。



・扱う時代の拡張

 4の扱う時代は、1189年のチンギス・ハーンの推戴から、十四世紀後半の明・ティムール帝国の勃興までを扱っている。

 最後に登場する人物は、十五世紀前半のスカンデルベグ(1405~1468)である。


 チンギス・ハーンというゲームの世界観を一言でいえば、遊牧民と定住農耕民の戦いを描いたゲームであり、史実に即して、騎兵に優れる遊牧民の国家のほうが有利に設定されている。

 定住農耕民の国も騎兵を扱えるのだが、遊牧民の騎兵とは種類がちがい、最強の騎兵である蒙古騎兵は、モンゴル人以外の将軍では能力が下がってしまう。

 そもそも南方では特産品の馬がないので騎兵を編成できない地域も多い。

 その点を踏まえて、チンギス・ハーンの世界観を壊さないのならば、扱う年代のお尻は、それまで大陸を席巻していた騎馬戦術が銃火器の発達で駆逐される前までにするべきだろう。

 そうなると、清朝が中国を統一した十七世紀末までが下限だろうか。

 そこまで行くとモンゴル帝国(チンギス・ハーン)は関係ないように見えるかもしれないが、その余光は残っているし、チンギス・ハーンの後継を自称する者などがいた。

 末尾のシナリオとしては、1644年に李自成が明を滅ぼした直後はどうであろう。


 お尻は清朝の中国統一ぐらいまでとして、頭はどこまで時代を遡るべきか?

 定住農耕民が強力な国家をつくるのに合わせて、遊牧民側も強大な国家をつくってきたのが、人類の文明史であり、その発端からゲームを開始すると紀元前まで遡ってしまう。

 しかし、チンギス・ハーンの世界観の重要な点は、世界の各地域のつながりであり、世界が一つのものとしてつながりはじめた、グローバリゼーション、「世界史」、各地域ではなくユーラシア史の始まりは、モンゴル帝国による東西文明の通行によりスタートするのだから、結論としては、4と同じく1189年のチンギス・ハーンの推戴からで良いように思う。

 ただ、大きな問題として、十五世紀後半からはじまる大航海時代および南北アメリカ大陸をどう扱うかがある。



・シナリオ

 ゲームの始まりの時期は十二世紀後半で変わりなく、終わりの時機を十四世紀前半から、十七世紀後半までに延ばしたいと上で書いた。

 そのため、4では四つのシナリオが用意されているが、それはそのままでよいとして、追加でシナリオを何本か増やしてほしい。

 私の案は以下である。


①1368年:明建国(1370年にティムール朝建国)

     4のシナリオではすでに大国の両国を小規模から始めたい。


②1453年:コンスタンティノープル陥落(ビザンツ帝国滅亡)

     ビザンツ帝国はオスマン帝国の進攻を止めることができるか。


③1526年:ムガル帝国成立(1529年にウィーン包囲)

     4ではインドは過疎地域だが、ムガル帝国が登場すれば話は別だろう。


④1582年:本能寺の変(織田政権でプレイする場合、本能寺の変が起きない)

     本能寺の変が起きなかった場合、東アジアにどのような影響があったか。


⑤1592年:朝鮮出兵(北虜南倭時代)

     内憂外患の明朝をどう立て直すか。


⑥1618年:三十年戦争(1613年にロマノフ王朝、1616年に後金成立)

     泥沼の戦争が始まる直前、後に大国となる二つの国が産声を上げる。


⑦1644年:明滅亡

     明朝を滅ぼした李自成は、強敵清国の進攻を止めることができるか。



・システムの改善案

 ゲームというのはシンプルなのがいちばんであり、何でもかんでも詰め込んでは、それはもはやゲームとは言えず、単なる自慰行為になってしまう。

 以下に個人的な改善案を上げるが、ほとんどは、4の制作時に検討されたものであろう。


①国王の称号

 4では、史実や戦績などにより、国王に称号がつくのだが、それだけでゲームの進行に影響はない。

 そこで、称号によって、戦闘時の敵の士気が下がったり、脅迫の成功率が上がったりする。


②インフラ

 4では、道をつなげなければ、他国へ攻めにくいし、交易も行えない。

 これは史実に則った重要な仕様なのだが、インフラには補修が必須である。

 この補修の概念をゲームに組み込んでほしい。

 古代ローマで整備されていたインフラが中世には放置され使い物にならなくなっていたと聞いている。

 作ったままでは駄目でその維持もゲームで表現できればと思う。

 あと、道に広い・狭いの概念を取り入れてほしい。


③人口

 4では人口の概念がないが、三国志のように取り入れてほしい。

 機械化の進んでいない中世では、今以上に労働力としての人が重要であった。


④寒冷化

 4でも寒波という自然災害が起き、ユニットの移動が制限されるが、遊牧民と定住農耕民の関係を考えるとき、この寒冷化が大きく歴史を動かして来た。

 基本的に遊牧民も定住農耕民との戦闘を望んでいたわけではなく、交易で必要な物資が手に入ればそれでよしとしていた。

 しかし、寒冷化によって牧草が育たなくなってしまったり、北方で生きることができなくなったりすると、有力なリーダーのもとで南下せざるを得なくなるのである。

 北方の地域に寒波が与えるダメージはもっと大きくしてもいいように思う。

 南下して他国の食糧を奪わなければゲームオーバーになってしまうような。


⑤火砲兵

 おそらくこのゲームの最大の欠点は、火砲兵が強力過ぎることにあると思う。

 ゲームバランスを壊しているので改善したほうがいい。

 たとえば兵種から削除して、信長の野望烈風伝の大砲のような仕様にすればいい。

 同じく蒙古騎兵もゲームバランスを崩しているように見えるが、こちらは史実を踏まえているので問題ない。

 火砲兵の問題は、史実に反して強すぎることだ。

 十五世紀ぐらいから小銃が戦力として役立つようになったように記憶しているので、その時代くらいから、小銃歩兵(?)を編成できるようにするのもおもしろい。

 バーブル指揮下の兵には鉄砲を持たせたい。


⑥箱庭システム

 4では、都市の勢力範囲のマスに各種の施設を建てて、文化度を上げることができる。

 たとえば、牧場をつくれば牧畜文化が上がり、大学をつくれば学術文化が上がる。

 田畑や牧場ばかりつくって、都市のまわりが田畑や牧場ばかりになるのはよいが、学術文化をあげるために、何十個も大学をつくるのは見た目として違和感が強い。

 であるから、都市の勢力範囲のマスには具体的な生産物の生じる施設だけを建設できるようにして、それにそぐわない文化度は違った仕組みで上下するようにしたらどうだろうか。

 また、自分で生み出すことのできない特産品を建設できるようにしてほしい。

 ただし、4でもイスラム商人などが特産品を発見してくれることがあるのだが、その地域に合わない発見・建設はできないようにするべきだ。

 南方で馬が特産品と発見・建設され、騎兵が編成できるようになると、一気にゲームの世界観がくずれる。


⑦破却・破壊

 箱庭システムで、自分の思い通りの都市をつくろうとしたときに、案外、すでにつくられた建物が邪魔になる。

 そこで、簡単に破却できるようにしてほしい。

 また、チンギス・ハーンやティムールは都市の破壊で悪名高いが、都市を攻略した際、大量の金銭や食糧が手に入る代わりに、建物がなくなり文化度が下がるイベントが起きるようにしてもおもしろい。


⑧壁

 4のパワーアップキットでは、壁を建設して万里の長城などを再現できるのだが、壁に道路を通すと、敵がそのまま侵入できるので、兵を常駐できたり、砦をつくったりできるようにならないだろうか。

 イメージとしては信長の野望将星録の支城。


⑨交易・港

 4にも港はあるのだが、その史実上の重要性に比べて、役割が弱い。

 たとえば、ネオ・アトラスのように港を通じた交易が行えるようになるとリアリティが増すように思う。

 十五世紀後半からはじまる大航海時代をゲームに反映させるためには、新大陸などに植民地を持つ西欧諸国は、毎月毎年、莫大な金銭収入を得られるようにするのはどうだろうか。


⑩異文化統治

 チンギス・ハーンというゲームで大きく史実と異なるのは、同じ文化の地域と、異文化地域の支配にかかるコストに、大きな差がないことである。

 ここはもっと難度を上げてもよいと思うが、ゲームとしては難しいところ。


⑪後継者問題

 プレイヤー君主が死亡し、後継者を定めると、他の王子を中心に忠誠度が下がるのだが、プレイに与える影響は小さく、これも実際と大きく乖離している。

 後継者をあらかじめ定められたり、遠方の王子が謀反を起こしたりするようになると、もっとゲームに深みが出るように思う。

 あと、支配地域の規模が大きくなったら、国内に王国や公国をつくれるようになってもおもしろいように思う。


⑫金銭の管理

 4では、金銭が各都市の管理となっており、国家としてプールできないのでそれも改めてほしい。

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