第5章 エピローグ
第59話 エピローグ
式典から数週間。
心養殿での生活もすっかり落ち着きを取り戻した。
天くんには四六時中ベッタリと
そのお陰で、天くんが私に絡んでくることは、とんとなくなった。
嬉しいような、寂しいような。
ふと、私を正妃にする必要はなかったのでは? と思ってしまう。
そんな私の疑問に答えをくれたのは、心養殿の廊下でぱたりと会った眼鏡君だった。
答えは、私を正妃にすると、天くんが『不老不死』になれるからだそう。
なにそれ?
「不老不死……。へー。凄いですね」
「御堂河内さん、信じてないでしょ?」
「はい」
「ハハハ。御堂河内さんらしいや。まあ実際、天が、不老不死になれたかどうかは、時間が経ってみないと誰にも分からないんだけどね」
「ふ~ん。なれてるといいですね」
不老不死か~。
本当だったとしても私はいやだな。
友達や知り合いみんなが死んでいく中、自分だけが生き残るなんて耐えられない。
天くんがなりたいなら、それは尊重するけれど……。
◇
天くんが絡んでこないということは、必然的に頼まれ事もなくなるというわけで、仕事を貰えない私と
それでも、一応、天くんの正妃という肩書きだけは強力で、今まで立ち入れなかった後宮の殆どの場所に出入りできるようになった。
その特権を活かして、最近は毎日のように養老宮へ顔を出している。
「毎日申し訳ありません。美城さんがどうしても行きたいと申しまして」
「ちょっと菊露ちゃん! 菊露ちゃんも行きたいって言ったでしょ!」
抗議の声を上げる私に対して、養老宮にいるご婦人がほんわかと微笑む。
「私達はこれっぽっちも迷惑ではないわ。若い人から元気を貰えるし、いろいろ手伝ってもらって、ありがたいわ」
養老宮に住むおじいちゃん、おばあちゃん達のお世話をしていると、介護施設に就職した実感が沸いてくる。感謝されると嬉しくて、少しでも助けになれればと思っちゃうのよね。
ただとても悲しいこともある。
別れがあるということ。
正直へこむ。
みんなが不老不死ならこんな別れもなくなるのかな……。
◇
紆余曲折あったけど、就職先の『後宮』という介護施設での今の私は、おじいちゃん、おばあちゃん達と毎日直接顔を合わせて、その生活を少しでもより良いものにするために無い知恵を振り絞り、身体を動かす毎日になった。
社内恋愛は――
「菊露ちゃん、養老宮行くよ~!」
「は~い!」
「ねえねえ、キスしていい?」
「ダメです」
「え~! ケチ」
――バレなければいいよね?
了
就職先の後宮で社内恋愛はありえません! 如月とこ @funyari
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