第55話 許嫁(2)
初デートは散々だった。
とも言えなかったのか……。
なんだか、よく分からないまま終わってしまった。
食べ放題のお店では、私達と同じテーブルに陶様が座った。
さすがにそれには私も頭にきて、声を上げてしまった。
「陶様! なんで私達と同じテーブルにいるんです!? 同じお店に入ってもいいですけど、せめて違うテーブルにして下さいよ!」
「いや~。御堂河内さん、ごめんね~。このお店、二名様以上じゃないと入れないらしいんだ。だから一緒に。ねっ!」
ねっ! じゃないでしょ!
だったら、諦めて外で待っててよ!
怒り心頭の私は、とにかく食べまくることにした。
二人と会話すらしない。
別に天くんと私がどうなろうと、もう知ったこっちゃないわ!
◇
頼んだ料理が、次から次へと運ばれてくる。
ん~!
食べ放題のお店の割には、どの料理もかなり美味しい!
このお店、アタリだわ!
う~ん、幸せ。
「お前、ホントうまそうに食うな。そういう奴は嫌いじゃない」
「……」
「また、今度どっか旨い店見つけて食いに行こうぜ」
「……」
なんか私が想像していたリアクションと違うのよね……。
そういうリアクションを求めていたわけではないんだけど。
◇
そんな初回のデートの話を誰かにしたくて。
それは酷いと言ってもらいたくて。
菊露ちゃんだったら、私と天くんが付き合っていることを周りに言いふらさずに秘密にしてくれるはず。
そう思って、今日は
迷惑だったかな……。
「美城さ~ん! 会いたかったです~!」
「菊露ちゃん! 私も~!」
菊露ちゃんが嬉しそうにそう言ってくれたことに心底救われる。
いつ見ても菊露ちゃんは可愛いわぁ。
と、心和んでいたのはそこまでだった。
「美城さん、おめでとうございます」
「え!? なにが?」
「天様と正式にお付き合いを始められたそうで。正妃第一候補は、美城さんになったと女官達の間で、もっぱらの噂ですよ!」
「……」
「ただ、やっかみもあるので注意して下さいね。なかにはかなり酷い嫌がらせをしてくる人もいるって話ですから」
「……」
なぜ、天くんと私が付き合っていることが広まっているの……?
天くんには絶対に秘密にしてと言ったはずなのに。
……。
その時、私の頭の中に浮かんだのは、キラリと光る眼鏡だった。
あの時、眼鏡君には、秘密にして欲しいとお願いしなかった。
なんで言いふらしたんです? と問い詰めれば、「僕は、御堂河内さんから秘密にするように頼まれなかったからね」という答えが返ってくるだろうことは容易に想像できた。
あの、あの、ヘンタイ眼鏡~!
んもうっ!
ホント、どうしてくれようか……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます