第43話 采女(6)


「美城ちゃん、私、そろそろ夕食の準備を始めるね」

「あ、もうそんな時間。すいません。お願いします」


 ヂュ リェン先輩が夕食の準備を開始する。


「作るのは、天様、バオ様、リン様、美城ちゃんの四人分でいい?」

「ダメです! ユェさん、リェンさん、ファさんも含めた七人分でお願いします」

「え? 天様と同じものを私達三人が?」

「いいんです! あ、でも、どうしても抵抗があるようでしたら、何品か抜くとか、少しだけグレードを下げてはどうでしょう?」

「うん。分かった。そうする。……美城ちゃん、ありがとね」


 よ~し!

 これで衣食住、全てを少しは改善できたかな?

 あとは、お休みをどうするか……。

 現状は全く休みがない。

 週休二日とは言わないけど。

 せめて、週休一日くらいにはしたいわ。

 でも、こればかりは……。

 坊ちゃんを頼るしかないのかなぁ。


 ◇


 坊ちゃん兄弟とダンディーなおじいさんのリンさんは、夕飯の支度がちょうど終わる頃に帰って来た。

 今は、兄弟二人で夕食を食べている。

 私達女官とリンさんは、彼らが食べ終わったあと、別室で頂くことになっていた。


 ちろっとダイニングを覗く。

 う……。

 兄弟水入らずのお食事タイム。

 部外者は入りづらいわ。

 でもでも、どうしても坊ちゃんと話をしたいことが……。


 え~いっ!

 邪魔してごめんなさい!


「あの、天様、お食事中に申し訳ありません。少しだけよろしいでしょうか?」

「あ! おねえちゃん! ねえねえ、今度ボクの部屋に来て! いいもの見せてあげる!」


 わあぁ~! 宝く~ん!

 いいもの? なんだろう?

 見せて見せてっ!

 いつ行こう、いつ行こう。


「……おい、御堂河内。おいっ!」

「え? なんですか?」

「なんですか? じゃないだろっ! お前が俺に何か用があったんだろ!」

「あ! そうでした。エヘヘ」


 う……。

 ちょ、ちょっと、そんなに睨まないでよ~。

 悪かったってば。


「あの……、あとで先輩女官三人についてお話をさせて欲しくて、お時間を頂けないかと」

「……分かった。亥の刻に俺の部屋に来い」

「はい。よろしくお願いします」


 ふぅ~。

 亥の刻ね。

 亥の刻……。

 亥の刻……。

 ん~、何時のことだっけ?

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