第31話 依頼(4)


「さっさと尚寝シャンチンの掃除で最高点を取って、俺を夜の平安宮に連れていけ!」という、チョー自己中な坊ちゃんのために、めっちゃ頑張った。


 なんで私がここまでしなくちゃいけないのよ~!


 初日は、お団子頭のシァに負けた。

 二日目は、まだ話したことのない名前も知らない子に負けた。

 三日目は、再び夏に負けた。

 四日目にして、ついに最高点をゲットした。


 そうして今、夜の平安宮に坊ちゃんと二人でいる。

 本当は眼鏡君も来るという約束だったのに、来なかった。

 んもうっ!

 眼鏡君め~。

 ドタキャンするなんてヒドすぎる……。


 感じる。

 感じるわ。

 あの、イケメン眼鏡君の悪意をひしひしと。

 私と坊ちゃんを二人きりにして、その噛み合わないやり取りを想像して、ほくそ笑んでるに違いないわっ!


 実は柱の影から覗いてたりするんじゃ……。

 クルッと後ろを振り返る。

 誰もいない。

 静かな闇が続くばかり。

 いない……わね……。


「おいっ! 御堂河内みどこうち、何してる? おいてくぞ。早く来いっ!」

「はいはい。今いきますよ~。ちなみに天様、道分かってるんですか?」

「知らんっ!」


 だったら、先に行かないでよ……。


 途中で、トイレ掃除をしながら、前回私があの女の人に出会った部屋を目指す。


 トイレ掃除、手伝ってくれないかな~。

 なんて少しでも期待した私がバカだったわ。

 当の坊ちゃんはと言えば、暇そうにトイレの外で待っている。

 手伝ってくれてもいいんですよ~。

 と、じっと見つめる。


「どうした御堂河内。腹でも痛いのか? トイレならすぐ後ろだぞ」


 違うわッ!!

 まったくもう。デリカシーの欠片もないんだから。


 それにしても……。


「早くしろ!」

「トイレ掃除よりも、俺の用事を優先しろ!」


 みたいな文句を言うかと思ったら、意外と大人しくトイレの外で待っている。


 どうしたのかしら?

 逆に不気味だわ。

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