第30話 依頼(3)


御堂河内みどこうち、俺と夜の平安宮に行くぞ」


 は?

 え? ええっ!?

 な、なんで?


「ははは。天、御堂河内さんが困ってるよ。御堂河内さん、びっくりしたでしょう。デートのお誘いだよ」


 え!?

 いや、えっと……。

 わ、私、社内恋愛はちょっと……。


「ははは。冗談、冗談。ははははは! 御堂河内さんの反応は面白いなぁ」


 くっ!

 イケメン眼鏡君めっ!

 その眼鏡のレンズを黒の油性マジックで、塗り潰してやろうかしら……。


「天、ちゃんと言わないと誤解されちゃうよ。あのね、御堂河内さん。御堂河内さんが夜の平安宮で会ったっていう女の人に、天も会いたいんだって。連れてってあげてくれないかなぁ」


 あぁ。なんだ。そういうことですか。

 ちょっと坊ちゃん、全く言葉が足りてないじゃない!

 紛らわしいのよっ!


「それは、やぶさかではありませんが、案内することの私のメリットは何でしょう?」

「は? お前のメリット? そんなもんいらないだろ! いいからさっさと案内しろ!」


 むかっ。


「ああ、そうですか。わたくし、ここのところ体調が優れず、なかなか尚寝シャンチンの昼の掃除で最高点を取ることができておりません。最高点を取りませんと、夜の平安宮のトイレ掃除はできませんので、案内することも難しいかと。最近、最高点をよく取っている女官の名前をお教えしますので、その者に案内してもらったらいいのでは?」

「そう言わずにさあ、御堂河内さん。ほら、天もなんとか言ってよ!」


「お前と行きたいんだ!」

「えっ!?」


 いえ、あの、そ、それは。

 ちょっ、えっと。

 その、ええっ!?


「友情の証として髪飾りを貰ったお前じゃないと会ってくれないかもしれないだろ! つべこべ言わずに行くぞ」


 くっ!

 坊ちゃんよ。

 ほんっとに、アンタは……。

 その口を、針と糸で縫い合わせてやろうかしら……。

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