第21話 髪飾り(2)


「彼女を心養殿へ連れていく。いいね?」

「はっ! はは~!」


 先輩が私の隣で平伏するのが見えた。


 え?

 私、どっかに連れていかれるの?

 なんで?

 なんでなんで?


「あ、あの、タオ様。か、彼女の格好ですが、尚寝シャンチンの制服では天帝様に失礼になりませんでしょうか? それに彼女は化粧もしておりません」

「ん。う~ん。そうだねぇ。僕はどちらでも構わないんだけど、四夫人スーフーレン辺りが声高に騒ぎそうだしねぇ。どれくらいで支度できる? なるべく早く頼むよ」

「はっ! はは~!」


 そこからは、もうまさにてんやわんや。

 バケツを引っくり返したような大騒ぎ。


 いきなり寮の脇にある共同浴場へと連れていかれた。

 かと思うと、服を全て脱がされて、お風呂に入れられる。

 ちょ、ちょっとちょっと!

 待った待った!

 自分でやります。

 自分でやりますからっ!

 って言ってんのに、五人の女に無理矢理身体を洗われて……。

 もうっ! なんなのよっ!

 いくら女同士だからって、これってセクハラじゃないの!?


 浴場から出ると、全身にいい香りのするオイルのようなものを塗られて。

 髪をアップに結い上げられて。

 入念に化粧を施される。

 最後に、浴衣のようなものを身につけ、その上から、胸から足元まである長いスカートのようなものを履かせられた。

 ああ、もう、なんだか自分が小さい頃に遊んでいた人形遊びの人形になった気分だわ……。



 身支度が終わった後は、心養殿に行った際の心構えを叩き込まれた。

 心養殿での歩き方から言葉遣い。

 天帝様との謁見時の心得、作法、挨拶の仕方。

 その他諸々。


 ちょっと待って~!

 そんなに一辺に覚えられないよ~。

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