第20話 髪飾り(1)
うー、よく寝た~!
と、腕を伸ばそうとしたところで、動きを止めた。
う……。
腕が……痛い。
き、筋肉痛が……。
で、でも、そんなことは言ってられないわ。
ミシミシと悲鳴を上げる身体を徐々に動かし、軽くストレッチをする。
うぅぅ。まだ痛いけど……。
おじいちゃん、おばあちゃん達を思えば、これしきの痛み。
介護施設『後宮』をより良い場所にするために、今日も一日頑張るぞ!
お~!
朝ごはん食べて、身支度して、
昨日、
ドアを開けると、もう十人くらいが集まっていた。
「おはよー」
「あ!
げっ!
呼び出し?
それも朝イチで……。
指導室ってナニ? なにするところ?
なんかその響きがチョー怖いんですけど……。
「あ、ありがとう。ちょっと行ってくる」
う~。
昨日のトイレ掃除に続いてナニ?
なんか私、目を付けられるようなことしたかしら?
コンコンッ!
「どうぞー」
「失礼しま~す」
「あっ! 御堂河内っ! 遅いっ! こっちに来い。早くっ!」
「は、はいっ!」
先輩の元に行くと、女性ばかりのこの職場には珍しく、若い男性の姿があった。
優男と言われそうな線の細い風体に、
私と大して歳は離れていないように見える。
しかもかなりのイケメン。
赤に近いベージュ色の髪と、明るい茶色の瞳。
どこかで見たことがあるような……。
気のせいかな?
「こちら、丞相補佐役であらせられる
「は、はいっ!」
その声に私は慌てて膝を折り、地に頭をつけた。
ちょっと、この会社、ここらへんブラックよね。
いくら上司でも、土下座する必要ある?
ジョウショウホサヤクってどれくらい偉いのかしら?
「陶様。こちらがご所望の『御堂河内 美城』で御座います」
「ん~。うん。御堂河内さん、ゴメンね。僕はちょっとキミがどんな子なのか見に来ただけだったんだけどね。キミの先輩が、そういうわけにはいかないって、どうしても聞かなくて。ん? キミ、綺麗な髪飾りを着けているね」
「あ、はい。ありがとうございます」
頭を下げたまま、お礼を言う。
それは、昨日の夜に、平安宮であった女の人に貰った髪飾りだった。
突如、フワリと空気が揺れ、地面に影が射した。
地につけている私の頭のすぐ上に、誰かが覆い被さってきたような気がした。
「……キミ、これをどこで?」
さっきまでの優しい声音はどこへやら。
冷たく硬い、氷のような声が耳元で囁いた――。
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