第6話 出会い(2)


 さてさて、やって来たるは、……なんだっけ?


 さっき、菊露ジュルちゃんが教えてくれたんだけど。

 雑多市場ザドゥシーチャンだったかな?

 まあ、取り敢えず市場よ、市場!


 いろんな物が売ってるんだって。

 都内にこんな場所があったなんて、初めて知ったわ。

 古い街並みを再現したテーマパークなのかしら?


「あ、あの、美城みきさん。な、なにから見ますか?」

「ん? う~ん。そうねぇ。菊露ちゃんは、なにか見たいものある?」

「わ、私は、一通り持っているので……」

「そっか。んー、じゃあ、まずは下着かな」

「し、下着……」


 菊露ちゃんが顔を真っ赤にして固まっている。

 あら可愛い。

 オネエサン、イタズラしちゃうぞ!



 市場は、物と人で溢れていた。

 人が多くてなかなか前に進めない。

 どの店も、店舗の前の通りにまで商品を並べるものだから、元々狭い道が更に狭くなっている。

 みんなで、押しくらまんじゅうしてるみたい。

 菊露ちゃんとはぐれないように、お互いに身体を寄せあって歩く。


 どこに何があるのか分からない。

 それぞれのお店が、それぞれ自分の好きなものを売っている。

 こっちのお店は布と平らなお皿、あっちのお店はくしと傘と野菜みたいな感じ。

 モノが一杯のおもちゃ箱の中に迷いこんだみたい。

 菊露ちゃんと二人、ここにはコレがある、あっちにはアレがあるって、歩き回ったわ。

 その甲斐あって、下着、服、日用雑貨と、一通り必要な物は全て買えた。

 総務の人がくれた紙幣と硬貨が、見たこともないものだったことにはビックリしたけど。

 この市場専用のお金なのかしら?


「菊露ちゃん、私の買い物にずっと付き合わせちゃってゴメンね」

「い、いえ。全然平気です。あ、あの……」


 菊露ちゃんがモジモジしている。

 ナニナニ?

 よく聞こえない。

 小さな声で呟く菊露ちゃんの口に耳を近づける。


「お、お姉ちゃんができたみたいで、……嬉しいです」


 うっわー! 天使!

 か、可愛すぎる~。

 菊露ちゃん、お昼ごはん行こう!

 オネエサンが、おごっちゃる!

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