第4話 面接(4)
面接の部屋は、狭い独房のような場所だった。
木製の小ぢんまりとした机が部屋の真ん中にポツンと置かれている。
その机を挟む形で二脚の椅子が鎮座していた。
片方に面接官。
もう片方に私が座る。
「じゃあ、まず名前と出身地から」
「はいっ! 名前は、
「……カナガワケン? どこだよそれ?」
部屋の狭さと面接官の態度に、面接というよりも、取り調べを受けているような気持ちになった。
……コ、コレが世にいう圧迫面接ってやつね!
威嚇して動揺させることで、素の私を見ようとしているのね。
負けないわよ!
根性見せたる!
その後の質疑応答も「はあっ?」「なんだって!?」「ワケわからん!」と、全くもって噛み合わない。
ここでキレたら私の負け。
なんでもないように平然と受け答えをする。
「もういいや」
面接官が私を追い払うように、頭の上に挙げた手をヒラヒラと振る。
ええっ!
そんなぁ~。
二十社目も敢えなく敗退か……。
燃え尽きた。燃え尽きたよ私……。
「ああ、そうだ。全員に聞けって言われてる最後の質問があった。アンタは天子様に何ができる?」
え……?
天子様? 誰それ?
天子様、天子様、……。
あっ! もしかして介護施設のお年寄りのこと?
介護施設の運営・管理を主な業務にしているこの会社では、きっと、お年寄りのことを天子様と呼ぶんだわ。
それなら……。
「はいっ! 真心を持って、誠心誠意尽くします。お年寄……、天子様の気持ちに立ち、何をして欲しいのかを素早く汲み取り、先に先にと行動いたします。また、天子様に気持ちよく施設を利用して頂くために、日々、自身のスキルアップにも努めて参ります」
面接官が、おっ! っという顔をする。
と同時に、突然、面接官の後ろのドアが、音もなくスウッと開いた。
年配の男性がのそりと出てくると、面接官にヒソヒソと耳打ちをして、ドアの向こうに戻っていった。
「合格」
えっ!?
今、「合格」って言った?
言ったよね?
言ったよね?
私の聞き間違いじゃないよね?
「あの、ご、合格って、採用ってことですよね?」
「え? ……ああ、うん、合格」
やった!
採用だ!
初めての内定ゲット~!
「このまま
ん?
……後宮? 後宮って何かしら?
……あ!
きっと、この会社が運営する介護施設の名前ね!
見学していけってことね。
「はい! 行けます」
「ん。じゃあ、このドアから行って。行けば分かるから」
「はい! ありがとうございました」
椅子からサッと立ち上がり、腰を斜め四十五度に折り、お礼を言う。
浮き足立つ足を懸命に押さえながら、面接官の後ろにあるドアへと足を踏み出した。
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