第2話 パウリーオン星②

達川欽は円盤作りを極めるために、この星1番の円盤職人の元を訪れた。





親切な住人が住居を教えてくれたのだ。





みんな経緯を込めて「師匠」と呼んでいる。





師匠の家に着いてみると、半径20m程もあるピンクの巨大な円盤が横たわっていた。





その上を白髪の老人がものすごい勢いで駆け回っている。





周りでは弟子と思わしき人々がバケツで、油のような物を休みなく円盤に撒いている。





弟子の1人に達川欽は話しかけた。





達川欽:一体何をしているのだ?





弟子:円盤を磨いているのです。





達川欽:なんだと、こんな巨大な物もあるのか?





弟子:はい、この石はビチクローペという特別な石です。





達川欽:あの老人は何故走り回っているのだ?





弟子:いえ、走っているわけではありません。


師匠は円盤を磨いているのです。





達川欽:走っているようにしか見えんが?





弟子:よく見てくださいよ、裸足で高速移動する事で、足を使って磨いているのですよ。





達川欽:なんと…円盤作りは手で行うのではないのか?





弟子:師匠は特別な精神力をお持ちなので、足に全神経を集中して、まるで水の上を歩くような感覚で磨いているのですよ。


普通の人がやろうとすると、足を動かすのが遅すぎて、石は潰れてしまいます。





達川欽:確かにあんな柔らかいものを足で踏んでしまっては、綺麗な形になど出来まい。





弟子:それにこんな巨大な石は手で磨いていては、すぐに変色してダメになってしまうのです。


だからスピードや効率を考えるとこれがベストな方法なんですよ。





達川欽:周りの弟子は何を撒いているんだ?





弟子:円滑油みたいなものですよ。


師匠が走りやすくなるように、とにかく足が触れないようにするためには、この液体で滑りを良くしなければなりません。


師匠は走ることと浮くことの丁度中間のような動きをしてるんですよ。





達川欽は師匠の芸当に目を見張り、しばらくここで円盤作りの修行をする事とした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る