第二十一幕 青き水の精霊主
歩けるまでに回復した悠真は、シャル達と
水晶と思われる
「
「うぅん……シャルは、どうすればいいと思う?」
「えっ、私ですか」
話を振られて驚いたのか、シャルは
「私には精霊の適性がないの。だから、この手の知識は
「精霊と契約したのは母で、私も実際に契約した経験がないのでなんとも……」
シャルの返しを聞き、悠真はふと記憶が掘り起こされた。
「しかし、ヨヒムとニアが精霊だったのには驚かされたな。この
「この精霊はわかりませんが、ニアとヨヒムは人で言えば四百歳以上のはずですよ。人に近い子供口調と姿は、おもしろ半分でわざとやっているだけですから」
(おいおい……じゃあ、俺は四百年生きてる存在に
完全に子供だと思って接していたため、なんとも言えない
悠真は
「シャルが呼ぶまで、どうして
「あれは
「ん、それ
エレアが目をぱちくりとさせた。
悠真は腕を組み、首を
「そんなに変な話なのか?」
「ほぼありえないわよ。そもそも、精霊と人では住む世界が違うもの」
「どんな内容だったのかまでは教えてくれませんが、母との契約によるものですね。ただ、自発的に顕現していますので、それだけで秘力を
シャルが苦笑いを浮かべつつ述べるや、エレアは短い溜め息をついた。
「でしょうね。特殊な方法でも
「どうしてかは、わかりませんが……今朝から妙に
自分の知っていた情報と違い、悠真はさらに首を
「あれ? 買い出しじゃなかったのか?」
「それも目的の一つでしたが、提案がなければ商業都市には行きませんでした」
悠真は生返事をして、シャル達から再び
「んん……?
「いいえ。この精霊は本体ですから、秘力が失われ続けているわけではありません。ただ、同質の濃度の高い秘力に
シャルの説明に、悠真は
「そう、ですね……商霊であれば体の
(ああ、そういえば……ピピンが、自分は
「だから本来は、術者の秘力を
二人の説明を聞き、悠真はわずかな
「マジか……じゃあ、どうしたものか」
精霊が閉じ込められた
強度はありそうだが、悠真の錬成武具を使えば
指先で表面をなぞると、ひんやりしていた。
やや
「なあ、これって、ここに来る前の……確か秘術文字だったか? じゃないのか」
悠真が指差した先を、シャルとエレアがじっと
「どこですか?」
「秘術文字なんか、どこにもないわよ」
確かに少々わかりづらい。悠真は指でくるくると何度も円を
「この辺りだ」
シャルとエレアは目を細め、視線を泳がしている。探し出せないらしい。
「だから、ここだ。ここ……あっ!」
指を
奇怪な現象に
「あらら、あらららら、あららららららら」
きらきらとした輝きが舞い、どさっと精霊が地に倒れる。両手と両足を縛っていた
単純に考えれば、消えた文字が精霊を
不可解で仕方がないものの、きっといくら考えても答えはでない。
いったん思考を打ち消し、悠真は精霊の前で
かすかに精霊の体は揺れ動いており、まだ息があるのだとわかった。
ゆっくり精霊の背を
「おい……おい。大丈夫か」
静かに
「あぁ、ついにこの日が来たか。
どこか寝起きにも聞こえる、か細い声だった。
「その者、今の
別世界の住人である悠真には、答えられない
答えに
「今は星暦一七〇〇年、十の月です」
「なんと、まあ……あれからもう、百年以上
精霊は自分の小さな手を見つめつつ、顔に
十八年しか生きていない悠真からすれば、
それこそ、現実味がまったくない。まるで実感の
「
それは悠真にも、あまりよくわからない。本当に文字で縛られていたのかどうか、
「いや、ここにいるみんなのお
精霊は
「どうして、こんなところに閉じ込められてたんだ」
「
その名称には聞き覚えがある。秘術は魔の力だと
「我を力の
精霊が力のない笑みをこぼしたが、悠真は
「薄い記憶じゃが、多くの者がここを
悠真の胸に、精霊が
「……なるほど、あの闇の精霊王が
「もしかして、ガガルダと知り合いなのか?」
「ああ、知らぬ
しばらくの沈黙を
「うむ、そうか、そうか……よかろう。ならば、我の魂も持っていくがよい」
精霊の
「な、何を……どうして、それを?」
「
精霊は少女の顔には似合わない、
「精霊が、魂を? 何よ、それ……?」
隣にいるエレアが、耳を疑ったような顔をしていた。
「どうせ、我はこのまま消えるしかない。力を吸われ続けて約百年……もう二度と、回復せぬ。ならば、闇の精霊王と同様、
「そんな……ほかに何か方法はないのか。助かる道はないのか。だって、百年だぞ。百年もこんなところに閉じ込められて、そんなのあんまりじゃないか」
視界が徐々に
涙で
ひんやりとしているものの、しかしどこか
「闇の精霊王が
少しずつ、精霊の体が透明感を増していく。それから
とても
「なればこそ、我はやはり
「久遠……久遠悠真だ」
「久遠、悠真。我が名はフェリアエス。
青き精霊主フェリアエスが、素早く顔の距離を縮めてきた。
まるで時が停止したかのような
今まで感じていた疲労感が、
悠真の額から離れたフェリアエスが、
「
フェリアエスの体は静かに消え、すべて小さな
冷たくも温かい精霊の存在を、心に強く感じた。
人とどう違うのか、どういった存在なのか、悠真は精霊に関してよく知らない。
それでも、百年以上も
本当に別の方法はなかったのか、そんな考えが頭の中をただ巡り続けていく。
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