第二幕 出会いの連鎖
「あぁあああ――っ! 俺の
お気に入りの場所となった橋の上で、悠真は
(施しを受けろよ。慈悲を
しばらくしてからそっと立ち上がり、柵の上に
(それにしても、秘力の扱い
物思いに
少し遠くのほうで、
悠真は、意識して
(んだよ、みんな冷てぇ奴らばっかりだな)
青髪を白い布で結った女の子は、目からこぼれる涙をしきりに
金髪の男の子はウサギの
(妖精族とかエルフとか、そういう種族なのかな?)
悠真は
「お前ら、いったいどうした?」
「ヨヒムが、私のおもちゃを取り上げたの」
「違う。ちょっと貸してほしいだけだってば」
二人して、かすれがちな声で
日本でもよく見かけた、
「私のおもちゃなのにぃ」
「少し借りるぐらい、いいでしょう」
「ああ、待て待て待て。わかった。わかったから」
「なあ、ヨヒムつったか。どうして、その縫いぐるみを借りたいんだ?」
「ニアちゃん、いつもおもちゃばかりで……だから、一緒に遊んであげたくて」
(ああ。なるほど。そういうことか)
ヨヒムの気持ちを察して、悠真は微笑みながら吐息を
「ニアは、ヨヒムと遊ぶのは
唇を
「ヨヒムは、一緒に遊びたいって、そう伝えてから縫いぐるみを取ったのか?」
今度はヨヒムが、無言のまま首を横に振った。
「それじゃあ、ニアが怒っても仕方がないだろ。いいか、自分がどうしたいか相手に伝えなきゃだめだ。ニアだって、ちゃんと話せばわかってくれただろ」
「うん」
ゆっくりと
猫毛なのか、とても手触りのいい髪質だった。
「ヨヒムがこんなに
悠真が目配せすると、幼い少女は小さく首を縦に振る。
するとヨヒムが、申し訳なさそうに頭を下げた。
「ごめんね、ニアちゃん。僕、ニアちゃんと一緒に遊びたい」
「うん、いいよ」
ようやく笑顔に変わった二人を見て、悠真は一つ
「よし、ニア。この縫いぐるみ、ちょっと借りてもいいか?」
「うん」
ヨヒムから縫いぐるみを受け取り、悠真はその背後に
「二人が仲直りをしてよかった。これも、お兄さんのお
悠真は一人で二役を演じる。
ここからが
「ずっと、仲のいい二人でいてほしいな」
大きく目を見開いた二人に、悠真は縫いぐるみをじわりと寄せていく。
「さあ、今度は三人で遊ぼうよ」
「お兄ちゃん、すごぉい」
「はい。もう
ニアに縫いぐるみを手渡し、悠真は再びヨヒムの頭を
「いいか。男が女を泣かしちゃだめだ。男なら女を
「うん、わかった。僕、頑張るよ」
小さな両手で拳を作って意気込んだヨヒムに、悠真は笑顔で
「ああ! 見つけた!」
少し遠くのほうから女の声が飛び、小走りに駆け寄ってくる人の姿を
ヨヒムとニアが、声を
子供達の後ろ姿を少し見送ったあと、悠真は後ろを振り返って歩いた。
幼い二人と接して、悠真は心に強く思う。ここがたとえ異世界であったとしても、少し人とは違う容姿をしていたとしても、地球と大きくは変わらない。
人の心を持ち、
「あ、お兄ちゃん!」
声はニアのものだった。肩越しに見ると、三人が足早に近づいてくる。
「ほら、シャルお姉ちゃん」
ヨヒムが女の脚をぽんぽんと
「あの、えっと……なんかお
女が
「いや、お世話って言われるほどじゃない。だから気にしないでくれ」
「あ、でも……」
「本当、本当。別にいい――」
言い終える前に、悠真の腹から
「あ、は、あははっ、いや、申し訳ない。朝から何にも食ってないんだ」
彼女の表情はフードで見えない。それがほんの少しの
「じゃあ、まあ、そういうことだから」
悠真は、足早にそそくさと立ち去っていく。
十数歩進んだところで、また女の声が飛んだ。
「あ、あの! よろしければ、お礼として一緒にお食事でもどうですか」
少し前には別の
悠真は両手を祈るように
「お
「あ、はい。
どこか
「あ、俺、久遠悠真。よろしくな」
「クドウユウマさん、ですか」
苗字も名前も
「久遠が苗字で、名前が悠真だ。気軽に悠真って呼んでくれ」
「あ、えっと……そうだったんですね。す、すみません」
女の
銀色の瞳を持つ、
彼女はさっとフードを
「わ、私は、シャルティーナと申します。お気軽に、シャルとお呼びください」
「私はニアよ」
「僕はヨヒム」
シャルの両側から、ニアとヨヒムが名だけの自己紹介をした。
悠真は口許に微笑み作り、大きく
「おう、よろしくな」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます