疑惑だらけの新聞部
「高木はいるか」
新聞部部長の
「俺に何か用か?」
呼び出した高木が近寄ってくる。威圧的な視線を向けてくる高木に対して、新一は臆せず立ち向かった。
「話がある。先週の未来予報について」
新一の言葉に、高木はふーっと息を吐いた。
「やはりか。ここじゃちょっとあれだから」
高木が教室を見ながら呟く。教室内の人達の視線が俺達に向けられていた。
生徒会長が新聞部の部長を呼び出した。当然この構図は、傍から見ると未来予報について聞かれていると誰でもわかるはず。
「わかった。生徒会室で話そう」
そう告げた新一は踵を返すとそのまま廊下を歩きだした。そのあとを追うように、高木も後ろをついていく。俺も一緒にその後を追いかけた。
「秋山……だっけ?」
「そ、そうだけど……」
話しかけられると思っていなかったせいで、言葉に詰まった。
「どうして、あいつを助けるんだ」
「えっ?」
高木の問いに、思わず声を上げてしまった。そんな俺をよそに、高木は足の運びを早めていく。
どうして高木はあんなことを言ったのか。高木が放った問いの意味を理解できないまま、生徒会室に到着した。
「それで、俺に何を聞きたいんだ?」
なんでも答えてやるといった態度を見せる高木に、新一が直ぐに問いをぶつける。
「どうして今回の未来予報は匿名だったんだ?」
「新聞部部長として、配慮した方が良い内容だと思ったから。それじゃ駄目か?」
確かに今回の未来予報の内容は、名前を伏せていなかったら笑い話で済むことじゃなかったかもしれない。それに、藤川本人も知られたくない様子だった。
「だ、駄目ではないけど。でも、いつもと違ったから気になっただけだ」
新一は言葉が見つからないのか、そのまま黙り込んでしまう。そんな新一に代わり俺は聞きたいことを聞く。
「それじゃ、俺から。高木はどうして未来予報を始めたんだ? それに、内容が当たるのはどうしてなんだ? 未来予報のからくりについて全て話してほしいんだけど」
「おい、大輔。それはもう少し後で聞こうと……」
新一の静止を振り切り、思い切って聞きたいことを言い放った。聞かないと始まらない。それに新一がずっと警戒している新聞部だ。少しは力になってあげたい。
「それは教えられないな」
俺の問いに、高木はすぐさま答えた。まるで模範解答を用意していたかのように、素早い対応だった。
「どうして?」
「教えたら意味ないんだよ。手品と同じだと思ってくれ。一流のマジシャンでも種明かしなど決してしないだろ。もし種明かしをしてしまったら、その手品の価値が一気に下がってしまうからな。未来予報も同じだ」
そう答える高木は、俺達から視線を逸らそうとしなかった。よほど自信があるのか、腕組みをして堂々とした立ち振る舞いをしている。
「なら、今回はどうして記事を発表したんだよ。匿名にする必要があるなら、発表しなくても良かったんじゃないか。別に、毎週未来予報を発表しているわけじゃないだろ」
「それは……」
高木が初めて戸惑いの表情を晒した。まさか聞かれると思ってなかったことなのか、眼鏡越しに見える目が泳いでいるのがわかる。
「……未来予報については何も言えない。教えられないんだ」
そうはっきりと断言した高木の言葉に同調するように、予鈴が鳴り響いた。
「とにかく、未来予報は今のまま続けるつもりだ。ここまで皆に受け入れられていることを、続けないわけにはいかない」
そう言い残した高木は、そそくさと生徒会室を後にした。
「結局、わからないままだな」
「そうだな……でも、はっきりしたよ」
「どういうことだ? 大輔」
「新聞部が何か隠しているって」
一つの確信を持てた気がした。
高木の動揺から見るに、やはり未来予報には何か秘密がある。
その確信を胸に、俺達は生徒会室を後にした。
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