第23話〜始まる世界と次元を超える者たち〜4



「ぜーはー、ぜー、はー、」

「王!!??」

宇宙船の操縦室に走り込んできたのは、宇宙人たちの王だった。

「-^○:〒々!!<%€$・!!(もうよい!!地球を殺せ!!)」

「王よ!焦るのは分かりますが、地球を死の星に変えてしまえば、我々の食料問題も……」

「*〒〆!!(黙らぬか!!)」

王は焦っていた。何せ、この宇宙船の王の間にすでに人間が辿り着き、自分を殺そうとしたからだ。命からがら逃げてきたのだ。

「^〒$%・:8々|>☆♪+○!?(朕を殺されても良いのか!?)」

王の息は上がっていて、焦っているのもよく分かる。だが、王とて力がない訳ではない。

「王よ、落ち着いてください」

「・×+<|:〒¥°#!!(落ち着けるわけあるか!!)」

「(チッ、面倒くせぇ……)」

王の慌てっぷりに操縦室は静まり返る。自国語の丸出しときたら、みっともないことこの上ない。

「分かりました、では地球を、死の星へ……」

「:〒々|\<!$$%7¥+¥4+〜¥^65#!!(その前に!ここ以外の機体を切り離せ!!)」

「?!まだ同胞が残っております!!」

「%.%|2!!(し、知るか!!)」

王は焦っていた。

「神」と名乗る者から王には、「この星は簡単に制圧できますよ」と夢のお告げがあったからだ。

「(夢になんか従うからこうなるんだよ我儘野郎……)」

操縦室の誰もが黙りこくる。

「分かりました、奴らが此処へ到達する前に、機体を切り離し、放射能ビームの充填を開始します」

「☆.☆3€(0!「い、急げ!」」



ガコンッッッ!!

「なんだ今の音!!?」

火呂は異変にすぐに気づいた。

『皆マズい!!宇宙船が今ある機体を全部切り離して逃げる気だ!!』

文明の利器ナノマシンを通じて菅野の警告が聞こえる。

『最後の最後になんか、やらかすっぽいぞアイツら!!』

皆!急ぎでしょうがないが、宇宙船を逃すな!!と追加で叫ばれた。


「了解だぜ〜」

ようやっと仁や、秋夜、六花、黒成、菅野と合流できた緋音と涙音。緋音が黒い悪魔羽を3対出現させ、腰から幾つもの触手を出す。

「全員、まとめて宇宙船に乗り込むぜ!!」

そう言って、メンバーを全員触手で巻き取り、宙へ羽ばたく。

「羽6枚でも重いか〜」

そう言いつつも、ものすごいスピードで宇宙船に向かっている。

「火呂!鷹!一旦外に出てくれ!!」

『了解!!だが、これから堕ちる宇宙船はどうする?!』

宇宙船は機体を落として逃げる気だ。そうなれば機体を落とさない方法を取らなければ地球が軽く?隕石衝突ってレベルの被害を被るこたになる。

「火呂!機体を切り離す為の装置を破壊してもらえるか?!」

『ナニィ?!それならもうやってるぜ!はっはっは!!』

「は、早い!!!!」

最強の名は伊達じゃないってわけだ。

「もうすぐ、着くぜッ!!」

6枚の巨大な悪魔羽の風圧はすごい。

こんなにスピード出してたのにすぐに止まれた。皆知ってる?車の徐行運転は、車がすぐに止まれる速度のことを言うんだよ?

「関係ない話してる場合じゃねぇだろ!バカタレ!」

「痛いでござる!!」

仁に、刀の背で叩かれる菅野。

この部はいつも緊張感というものが足りない。

さて、地上に降りたことだし、と秋夜は一歩前に出る。

「皆殺しだ、宇宙人」

仁は思った。これまでに見たことのない秋夜だ、と。

「狙撃は任せとけ、秋夜」

「頼むわ!」

日常生活も送れるよう設計された、人工筋肉と金属や機械を少量ミックスした体ではなく、完全に殺すことに特化した、戦闘用のボディー。

前世では両目を覆っていた丸めのバイザーも、今は殺意に包まれた、鋭利な形に変更されている。

人と似たようなシルエットだけど、もはや秋夜を人と呼ぶことは、出来ないだろう。

あらゆる攻撃に耐え、絶対に壊れることのない鋼鉄の体と、新たに追加された兵器の数々。

元々は内部に格納していた武器を全て破棄して、体をより堅く頑丈に。オミットされた武器は巨大化され、追加パーツとして体に装着された。

前回、いや、前世で、グパーラと共に仁をコンビネーションで苦しめたゾライアスを、一瞬で戦闘不能にした巨大なガトリングガンは、右手をスッポリと覆い隠している。

そして、宇宙や空中を自在に飛行する為に背中に装備された、大型のジェットパック。

これにより、仁に負けない機動性を得ることが出来る。

「さぁ、行くぞ虫けら共!」

秋夜は真っ先に、末端の兵士達の塊を狙った。

右手のガトリングガンを構え、ブースターを絶妙に操作して、全身が機械でできているとは思えない、滑らかな動きで宙を走り回る。

ガトリングガンが回転を始め、銃弾を吐き出し始めた。

「がっ」「ぐぎゃあ!」「うわぁ!?」

空中を完璧に味方にした秋夜は、兵士を次々に死体へと変えていく。

「や、やめろぉぉぉぉぉ!」

グパーラは細身の剣を取りだすと、秋夜に向かって突撃した。

「これ以上、私の部下を殺されてたまるかぁぁぁぁぁぁ!」

あぁ?と秋夜の動きが止まった。

「これ以上、部下を殺させない、だぁ?」

近くにいた兵士に、秋夜はガトリングガンを叩き付けた。グチャグチャになった顔が、空中に散らばる。

「罪のない人々を虐殺しておいて、よくそんなことが言えるなぁ!」

秋夜は左手を背中にやり、赤熱した剣を取り出した。

「貴様には、ここで死んでもらう!」

グパーラは俊輔の頭を貫こうと、細身の剣を突きだした。しかしバイザーに当たった直後、ポッキリと折れてしまった。

「死ぬのはてめぇだ!」

秋夜は左手の剣をグパーラの脳天から突き刺した。剣が真上から刺さったグパーラは、再生はできても身動きがとれなかった。

「地獄で体験した業火を体験させてやる!」

ガトリングガンからチューブが伸びて、背中のジェットパックの燃料タンクに接続された。

「ヘルファイヤーブレイカー!」

音声認識で銃身やパーツが外れ、ガトリングガンが巨大な火炎放射器になる。

「焼き殺してやる!」

規格外の炎はグパーラの再生を上回り、その体を隅々まで焼きつくし、最終的にはグパーラも火炎放射器も、焼け焦げた黒い塊と化した。

「すごい…」

仁は、自分でも知らないうちに呟いていた。

自分じゃ敵わなかった相手を、六花の狙撃もあったとはいえ即座に撃破し、兵士も残りが半分以下になるまで倒している。

「さて、敵も片付けたことだし…」

焼き尽きた火炎放射機と、燃料の尽きたジェットパックをパージして、秋夜は言った。

「あとは、大将の首でしめぇだ!」

ジェットパックが無くても、秋夜は止まることを知らない。

背中のパーツが変形して、小型のブースターが現れた。菅野が開発した内蔵式のブースターは、半年の間は使える超便利な品だ。

残った最後の武器である、赤熱した大型のヒートナイフを構え、将軍の元へ。

「どうよジジイ!これからあの世に行く気分はぁ!」

そうだな、と将軍は言う。

「その感想は、お前から聞かせてもらおうか…」

将軍の斧が、僅かに動いたように見えた。

「まずい!避けろ秋夜!」

仁が叫んだ直後、俊輔の体から下半身が離れ……なかった。

「もう、経験済みだからなぁ」



「な、確かに仕留めたはず……?」

王に捨てられ、機体が離れるまでの時間稼ぎに使われた自分。怒りをここでぶちまけてやろうかと思っていた。それなのに……

「まだ終わらない!」

俊輔はナイフを、まるで銃のように、水平に構えた。

そこからは乱戦だった。

6枚羽の悪魔が舞い踊り、悪魔の妹は悪魔と共に踊り、剣士が切り刻み、スナイパーが狙撃し、大熊は超高火力のエネルギー弾を撃ち込み、研究員らしき白衣の女?はひたすら自傷行為をしていた。

え?自傷行為??

「レッツ、傷移動!!」

白衣の者が叫んだ瞬間、腕からブシャッっと血が噴き出る。

「そ、そんな能力ではなかったはず!!」

「時代は変わるんだよ……」

ふふふっと不敵に笑う菅野。

『菅野ォ!俺様と鷹の脱出は成功ダァ!』

「了解したレッツ切腹!!」

1人で何かを了解して腹を捌いた傷は何処へ避けようとも、傷を受けた。将軍は斧を菅野に投げる。するとそこへ、当然のように仁が刀で斧を防ぐ。

空中戦は緋音が涙音と共に行なっている。

「皆〜、贈り物だぜー!!」

緋音がそう叫ぶと、全員の首に妹ちゃんの召喚した注射器が突き刺さる。

「な、何を……」

将軍は困惑した。

斧を回収し、降り下ろす。

しかし、当然のように、まるで決まっていたかのように、川が流れるような滑らかな動きで、仁は刀を召喚して斧を防いだ。

「ああ…確かに受け取ったぜ、緋音!」

仁が、覚醒した時に浮き出ていた全身に流れていた模様から、光が飛び出した。

「ぬ…なにぃ!」

これには流石の将軍も目をつむり、距離をとった。

「なんだ、今の光は…」

模様から溢れた水色の光が、仁の体を覆っている。

「奴の、新たな力なのか…!?」

不意に、光が消えた。

「どこへ消えた!?」

仁を探そうと将軍は、辺りを見回した。

どこにも見当たらない。いるのはさっきの奴らだけ。

不意に光を感じる。

さっき立っていた位置に、亮真は平然とした顔で立っていた。その姿を見て、将軍は目を見開いた。

何ひとつ、変化はない。

「なんなのだ…なんなのだ貴様はぁ!?」

また、体から力が抜けている。

あんな状態で、殺すつもりで降り下ろした斧を、刀一本で防げるとは思えない。

「だったらなんだ…?」

亮真の瞳が、すぐ近くで将軍の瞳を覗きこんでいた。

「な、にぃ…!?」

驚いた時には、将軍の体が宇宙船にめり込んでいた。



将軍の挙動不審ぶりを見ながら、菅野は笑った。

「ふっ、緋音が吾輩たちにくれた“能力強化薬”が、これほどの力を生み出すとはな…」

将軍には何が起きているかわからないが、第三者の視点から見ると、なんてことはない。仁は高速で移動しているのだ。

まぁ、その姿を捉えるには、菅野のように千を越えるスーパースローでみえーるカメラと専用のコンタクトレンズを用意しなくてはいけないが。いや、緋音達ならばこんなことしなくても見えてるかもしれないが。

「おのれぇ…」

宇宙船から抜け出そうと将軍はもがくが、体がガッチリはまっていて、抜けられそうにない。

そして、将軍は息を呑んだ。

すぐ目の前で仁は刀を持っていた。構えたいた。

「待てぇ!」

ゆっくりと刀を振り上げる仁を見て、将軍は叫んだ。

「待ってくれぇ!情けを!情けをぉぉ!」

はぁ…と仁は呆れてため息をついた。

「情けは人の為ならずというが、お前は宇宙人だからな」

刀がゆっくりと、将軍に迫る。

「後悔することになるぞぉぉぉぉぉ!」

刀は将軍の体を押し切り、宇宙船を真っ二つにした。



その時、耳の通信機から、菅野の声が聞こえてきた。

『まずいぞ仁!』

どうした、と仁が言う。

『お前が真っ二つにした宇宙船だが、片側は地球から離れていくが、もう片方は地球に向かって移動を開始している!』

確かに、片側はゆっくりと地球から離れているように見えるが、もう片方の宇宙船から、青色の炎が噴射されていた。

「まさか…地球に落とす気か!?」

そうともぉ!と、先程斬った時に残った将軍の頭が、ゲラゲラと笑っていた。

「貴様ら人類を、道連れにしてやるわぁ!アーハッハッハー!」

「…狂人め」

将軍の体を何度も斬りつけた後、波動を使って、細部まで消滅させる。

「そこで、永遠に寝てな」

仁は急いで、宇宙船の片割れに向かった。宇宙を駆けながら、仁は通信機で菅野に連絡をとった。

「おい菅野!黒成のビームで、あれを止めることはできないのかぁ!?」

『黒成のビームでも全てを破壊することは難しい……かもしれない……前世の二の舞になる可能性が……』

「じゃあ、どうすれば…」

地球に向けて進行する宇宙船を睨み、仁は舌打ちをした。



『俺様に任せな!』

亮真の通信機から馬鹿でかい声が聞こえてきた。

『その声は…』

「火呂…か?」

おうよ!と仁の問いに応えるが、肝心の姿は見えない。

『ここよここ!今からそっちに行くぜ!』

そう言って火呂は町中を走り、地面を踏み抜いて跳躍した。

「そう!この真の力を解放した俺様にお任せだぜ!」

大気圏やその他もろもろを越えて、仁の前まで火呂はやって来た。

「お前……前世の二の舞に……!!」

「おおっと!あんまり尺がないんだ!無駄話はNGだぜ!」

詳しくは話せないけど、緋音から貰った能力強化薬を貰って真の力を得た、らしい。

「見せてやるぜ!俺様の力をな!」

火呂は一瞬で、落ち続ける宇宙船の前に移動した。

「必殺!アブナイお薬でさらに強化された能力をフルパワーを越えたMAXパワーで惜しみ無く打ち込む無敵のスーパーナックル!」

ドゴォン、と宇宙に衝撃が走る。

宇宙船に拳が触れたとたん、その4分の3が一瞬で消滅した。しかし、宇宙船の操縦室はどんどん離れていく。

そして拳を叩きこんだ火呂の右腕は、右肩から先がズタボロになっていた。

「そう!一回使うと腕がしばらく使用不可能になる諸刃の拳だったのさ!回復はすぐだけど!!多少の無理は大丈夫ってこった!!」

あとは頼むぞ!と、火呂は言って地球に向かって落ちていった。

『緋音だぜ!回収は任せろ火呂!』

火呂の回収は空を飛べる緋音が務めるようだ。

「クソッ、止める方法はないのか!」

仁が見つめる先には、地球がある。愛する人達がいる日本がある。

この宇宙船の残骸は、その日本に向けて今も進行を続けているのだ。そして、悪の根本である操縦室のある部分はどんどん遠ざかっていく。

『止める方法なら…ある……でも、前世の……』

苦しそうに菅野は言った。しかしその言葉に対して仁が言った。

『前世が何のためにあったのか考えろ!』

黒成のビームで破壊するのではなく“押し出す”ことが出来れば、破片も宇宙船も落ちてこない。だが、それでは1人だけ絶対に助からない。この方法は、仁だけが、助からない。


『すまない……本当にすまない、吾輩としたことが……』

大丈夫だ、と仁は言った。

「結局、どうやって宇宙船止めんだ?」

「それは…」

分からない、と呟く菅野の代わりに、近くの六花が言った。

「黒成、お前が、破片も何もかもを全部消失させるんだ」

「?!」

「前世が何のためにあるのか、賭けたいんだ、俺は」

六花は寂しそうに言う。

でも、失敗したら……と黒成は俯く。

『皆も、聞いてくれ』

「何故、前世であんなにも苦しんだのか。」

「今を、変えるためだ。」

「神様とやらは存外お優しいようだ。今までこんなに苦しめてきて、今ようやっと皆が生き残るための策を用意してくれてる」

黒成は泣いていた。これ以上、大切な仲間を、友を失いたくないと……。

だが、助かる道があるのならば。

黒成は決意した。

涙を拭い、バンダナをキツくしめ直した。

「わかった…どうすればいい、菅野」

「飛距離や正確性を確実に得るために、黒成のビームを、六花のレールガンで発射する!」

毎度、無茶言うぜ……と言いながら、六花は黒成とレールガンを接続した。

まぁ、電力供給のコードを黒成に握らせただけなのだが。

「これで、黒成のビームを確実に当てられるな…」

「黒成、リミッター外しておいた!六花、よく狙えよ」

「了解!」

「仁は急ぎで宇宙船から離れろよ!」

迫り来る宇宙船に背中を向けて、仁は地球に向けて駆け出す。

『多少の破片なら細かく切り刻んで塵にしておいてやる』

「OK!!いくぞ、黒成!」

「おう!」

レールガンに注入された黒成のエネルギーが、ビームとなって銃口から勢いよく発射される。

エネルギーの柱が宇宙まで突き進み、宇宙船に直撃する。

「ぐっ…」

一瞬、能力のリミッターが作動せず意識がとびかけた黒成は、意識を集中させる。

黒成ビームを受けた宇宙船は電撃を纏って崩壊を始める。

「菅野!」

「まだだ黒成!もう少し出力を上げないと、奴らの力に負ける!!」

仁の体は既にボロボロだった。体のあちこちが痛むが、剥がれ落ちる破片を大気圏に入る前に塵芥にしていく。

「やばいな…宇宙船をぶっ壊す前にレールガンがぶっ壊れそうだぜ…」

あと少しだ、と菅野は言う。

「あと少しで、操縦室にも届く……」



「7°%3(7°(☆3(!!%+4$5☆!!(マズいぞ、マズいぞ!!死にたくない!!)」

王は自国語丸出しで操縦室で騒ぐ。

「くそっ、なんて奴らだ!!あんな出力出るなんて聞いてないぞ!!」

「+€(%\!5…4%・7.68$!!(逃げ切れ!なんとしても!!)」

操縦室に警告音が発せられる。

「だ、脱出を……」

「王!いけません!!」

王が脱出用のコックピットの方へヨロヨロと向かう。

もう、あのバンダナ少年の能力のエネルギーが操縦室をも包み始めている。

脱出用のコックピットは既に高温。とてもじゃないが、そこに座るにはもう危険すぎる。

「朕は逃げるんだ……死にたくない……嫌だ、嫌だ、」

ドゴォ!!

脱出用コックピット室が、エネルギー量に負けて飛び散る。しかし、王はうわごとのように嫌だ嫌だと言いながら脱出用コックピットのあった方へ進む。

「王!!お戻りください!!」

「嫌だ、、、嫌だ、、、」

ガタガタと室内全体が揺れ始める。

「くそっもうだめだ!!」

「なんなんだ!あの人間たちは!!?」

「兄弟の度を超えている!!悪魔どもめ!!」


消えたコックピット室に向かっていた王は、そのままバンダナの少年のエネルギーに巻き込まれて消える。

そして、操縦室自体も限界を迎える。

逃げられない。

「ははっ、我々はとんでもない奴らを敵に回しちまったようだな……もはや放射能エネルギーさえも充填するどころか、アイツのエネルギーに飲み込まれちまってる……はは……」



宇宙船の全てが強力なエネルギーに巻き込まれて消える頃、全員に限界が訪れていた。

「ははっ、あはははははは!!」

緋音は逃げ惑う宇宙人たちを喰い散らかしながら、火呂を回収したあと、黒成に能力強化薬を投与していた。

「くそっ、頭がクラクラする!!」

「もう少しだ!頑張れ黒成!!」

「あともう少しぃぃぃ!!」

頑張っているところ悪いが、と仁から連絡が入る。

『多少の破片が落ちるかもしれん!!』

「任せて」

名乗り出たのは、緋音の妹、涙音だった。

「今の私は最高潮。地獄のフタさえも開けてやることができるわ」

「無理すんなよ、マイシスター」

妹に血に似た能力強化薬を渡し、緋音はニカっと笑う。お前にしか出来ないことをやり遂げてこい、と。


宇宙船の真下に来た涙音は、大きく息を吸い込み、叫ぶ。

「ペイントペイン!!」

空をゴゴゴ……と赤黒い雲が覆い始める。緋音の能力を血で借りているため、多少の時間なら蝶の羽を出現させて飛んでいられた。

「地獄の門よ!いざ開け!!」

重力で落ちてきた宇宙船の破片たちは、巨大な地獄の門へと引き寄せられていく。

「地獄を何度も味わった、今度はお前達が償う番だ!!」

宇宙船から落ちる宇宙人たちも、漏れなく吸い込まれていく。


そして、全てが消える頃。


緋音に回収された仁と涙音は死んだように眠りについた。

「あははは、俺も、寝て、いいかな?」

緋音は自分の血から作った全員分の能力強化薬を作った反動が来ているようだ。

「そうだな、世界は全体的にショックを受けただろうが、俺たちも一旦休憩しないt……」

そう言って六花は倒れ込んだ。

「六花!!」

確認すると六花も寝ているようだった。

「仕方ない、吾輩の研究室で眠らせてあげよう、頼めるか、緋音?」

菅野の研究室は無事だった。

「仕方ないなー、あとで宇宙人1人な。」



こうして、地球の危機は救われた。

遊部の次元と前世、来世を賭けた復讐劇はこれで幕を閉じたと思われた。


しかし 今は、彼らに賞賛と休息を。。。

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