第22話-この世界のこと。
この世界のこと。
地球に存在する人間の約3%が能力者だった。世界のトップや政府は自国の能力保持者をより多く獲得する為に子供の出産率を増やして、能力開花の研究に明け暮れる日々だった。おかげで世界の中でも先進国だと言われながら子供の出生率が絶望的だと言われていた日本も、あの頃から随分と子供が増えた。
また能力が開花すると身体の成長が止まるということも研究で裏付けられている。
まずは金に切羽詰まっていた親に売られた女の子の話をしよう。
彼女は「たかこ」
政府の能力開発の実験体だ。
毎日毎日、体にメスを入れられ、チップを埋め込まれ、能力者の遺伝子細胞を埋め込まれ続けた。だが、彼女は失敗作だった。
何をしても反応が無く、何をしても能力の覚醒には至らなかった。左腕に刻まれたバイオマークは何の意味も持たなかったのである。
そんな政府は、「人工超能力者兵器開発」の「勝利の悪魔たち計画」の実験体、製造番号「D:000495番」の「たかこ」を廃棄処分を下した。ただ捨てるだけでは政府の闇の実態が暴かれてしまうので、小学校に編入させた。
この「人工能力者兵器開発」の「勝利の悪魔たち計画」には、遊部メンバーである火呂も実験体の1人であったようだ。しかし、彼の能力も一時的ですぐに燃料切れを起こしてしまうとして、問題児扱いを受けていた。
「たかこ」は学校ではいじめられ、肩身の狭い暮らしを送っていた。唯一の心の癒しである路地裏の野良猫が殺されるまでは。
教室で猫たちの死体を見せつけられ、無惨に殺された猫たちが「たかこ」を能力者へと昇華させた。
教室にいた全員を殺し、学校にいた全員を殺して「たかこ」はさらに街の人たちを殺して、悪魔と名乗り「緋音(アカネ)」へと変わった。
そして、妹となる少女と出会う。少女は自分の名前を忘れていたので緋音が「涙音(ルイ)」と名付けた。彼女は衝動的に能力を開花させ、絵を具現化させる能力で街に隕石を落とし、親を殺し、街の人を巻き込み、そして、ただ1人の友人を殺してしまったことに罪悪感を覚えていた。
世界はテロや紛争が絶えなかった。
遊部メンバートップの「仁」の家族や家政婦さんたちは、テロに巻き込まれ亡くなってしまう。が、「仁」はこの事をキッカケに能力者となる。そして、テロを仕切っていた能力者を殺している。
最弱能力者だった「黒成」は生まれた瞬間にその街ごと消し去っているほどの能力者で、無限のエネルギーを操ることができる能力者だった。
遊部メンバーは皆、たった1人でもゆうに国一つを相手どれる実力を有している。
学園都市「如月学園」では、対テロの戦闘などをしてバイト代として稼いでいた。
遊部は幸せだった。
宇宙人が来るまでは。
彼らが「能力者」を「兄弟」と呼び、連れ去り、残りの人類まとめて地球ごと死の星に変えようとした。
遊部メンバーは手も足も出なかった。
皆殺されて終わる。
それが悔しくて、遊部メンバーは神の運命に逆らって人生を繰り返すことにした。
神は怒った。何度も繰り返す者たちを、「能力」の「ある」世界であれば宇宙人に。「能力」の「無い」世界であれば人災で。殺した。何度も、何度も。
だが、何度も繰り返すうちに、遊部メンバーや、関係者たちが、死の記憶、以前の記憶を残していることが分かってきたのであった。
遊部メンバーは繰り返すうちに能力が変容し強くなっていった。いや、再度生まれ落ちるまで死の世界で「研究」し、「研鑽」し、「修行」を積んでいたのだ。その影響なのだろう。魂はどんどん強くなり、まさに今、宇宙人に勝とうとしている。
「神」は焦っていた。
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