第11話- 輪廻の記憶 -


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「俺に触んな!!」

黒成はそう言って右手で払った。

するとバシッと言う効果音とともに火呂の姿は消えていた。まだ誰も気づいていないのだが黒成から見て右側の壁に穴ができていた。

「何だよみんな!!いっつも、わぁばっかり!!

なんなんだよ!!ふざけんなよ!!

頭おかしいんじゃねぇの!!ふざけんなよ!!」

顔を真っ赤にした黒成は、何故か突然キレ始めた。

結構のんきしてた皆も黒成の巨体とその迫力にビビった。

「機嫌悪い?!んだよ!悪ぃよ!!

だばって何でわぁだけ! わぁ だからって何でからかうんづや!!?頭おかしいんじゃねぇの!?」

「落ち着け黒成!なんかおかしいぞ!?」

今までほぼ空気だった秋夜が黒成をなんとか押さえようとした。


「触んじゃねぇ!!」

黒成な秋夜を文字通りぐーでなぎ払った。

すると黒成の手からオレンジ色の光が飛び出て、秋夜の上半身と下半身が引きちぎれ寸断された。体の半分を失った秋夜はそのまま埃の目立つ床へと落ちていった。

体の断面図は綺麗に焼けていて、かなりエグい状態に仕上がっていた。

「黒成の能力は……静電気程度のエネルギーを操る能力のはずじゃ?!」

立ち上がって叫ぶ華乃の顔は真っ青だった。

だがその言葉にも黒成は過剰に反応して見せた。

「ふざけんな!いつもそうやってわぁのことだけ馬鹿にしやがっあばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばバババババババババババババババばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばば」

華乃の解説をよそに、あばばばばと叫ぶ黒成の体の穴という穴からオレンジ色の光が溢れ出ていた。

……関係ないがたしかとある禁書目録にもそんな演出が使われていたはず……

「一体どうしたんだよ?!」

「あばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばば」

六花の呼びかけにさえも狂ったようにあばばばばで返す黒成。


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(おい!おい黒成!!)

(おーい、どこ見てんだー!?)

あれ?どうなってるんだ?わぁは今どうなってるんだ?

ここは小説、を現実にしたかのような?

(明後日の方向見てるぞーー、おーい)

このストーリーは、一番最初に皆と書き合ったストーリー……?菅野も女の華乃の方として登場?してるし。あれ、でもなんでわぁは、こんな事に?夢?なんなんだこれは??

わぁは……今まで皆と飯を……?

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「なんかヤバイから俺っち逃げるわ!!」

パソコンを捨てて秋夜を拾った華乃は引きこもりとは思えない速さで秋夜を持って逃げだした。

「クソッ一体何がどうなってんだ!」

「これなら、能力者の奇妙な冒険とか書けそうだな」

冷静な声で仁は慌てる六花に声をかける。

「ちょ、今黒成にそんな刺激与えたら危険だぜ……?!マイシスターを安全な場所に避難させないと……」

「それには及ばないぞ緋音」

突如、黒成のあばばばばが止まった。

黒成はそのまま倒れて動かない。首に注射器のような細長い棒が刺さった状態で。



「……全く、ついにこの時が来たか……」

プラスチックのオモチャのような拳銃を持った鷹は、倒れた黒成の首から注射器のようなものを抜き取って懐に仕舞うと今度は代わりにスマホを取り出した。

「あーもしもし、ターゲットの確保に成功した。回収班を寄越してくれ」

鷹はそう伝えてスマホをしまった。

「……さてと、なんて言えばいいのかなぁ……」

説明がしづらい!と言わんばかりに頭をかきながら、鷹は、まだ部屋に残っているメンバーの方へ振り返る。

「鷹……お前、まさか敵国のスパイ、なのか……」

「一応あってるといえば合ってるな」

でも少し違うけど、と鷹は六花の目を見て言葉を付け足す。

「あーそう。全部嘘だったんだ?仲良くしてたのは。へぇーーーー??裏切ったんだね??」

緋音はそう言って緋い爪をナイフのように鋭く伸ばした。

「いやいや、そんなことはない……皆とはいい友達だったし、そうだと思ってるし、これからもそうでありたいよ」

鷹はそう言って少し俯いた。

「裏切ったのに?」

歯ぎしり交じりの緋音の声。緋音は鷹を殺す気だ。

「黒成をどうするつもりだ」

緋音への牽制の意味を込めて語気を強めた。

「……彼は依頼人に届けるだけさ。……勘違いするなよ、俺だって好きでこんなことするわけないじゃない。機会さえあればみんなに話……」

鷹は言いかけてそこで黙った。

鷹の腹から夥しい量の血と、誰のものかすぐにわかる真っ赤な細長い爪が突き出ていた。

「いつから裏切ってた?最初から?いつも影を薄く保ってたのはそのせい??」

爪が抜かれて鷹はなすすべも無崩れ落ちる。

崩れ落ちた鷹の背後には血塗れのレイピアを持った秋夜がいた。


「やっぱり、日本もアレを狙ってたのか……ボスに、報告だな……」

秋夜から発せられたその言葉に誰もが驚いた。

鷹の体から血液がどんどん流れ出て、赤い海が出来始めていた。

「秋夜!?お前、?!」

緋音は目を鋭くさせて秋夜を睨むが、そんなのは御構い無しと言った風に秋夜は平然と立っていた。

「おかしいなァ!?確かに途中から匂いが変わったんだよなぁ!?」

「おかしいですね!?僕は君を怖い人だと思っていたよ!!」

緋音はシャアァァァァァァァ!!と口が裂けそうなくらいにまで口を広げ、歯の全てが獰猛で恐ろしい牙へと豹変させて、突如突進した。

そんな緋音を見て秋夜は、やれやれと呟いた。

「ほんと、君に脳みそがあるのか心配になってきたよ」

秋夜は低い姿勢で突進してくる緋音の左肩に右手で掴んだレイピアを突き刺した。

「実は、コイツには即効性の毒が塗ってあるんだ。だから、残念だけど君はもう終わ…」

そう言いかけて、秋夜は思考が止まった。(なんで動ける!?)

緋音は速度を落とす事なく若干の思考停止で麻痺している秋夜を勢いよく押し倒し、そのままナイフのような牙で秋夜の喉に咬みついた。

「なッッッ!?!?」

驚きの表情のまま、喉から血を吹き出す秋夜に、切れ味抜群の爪を秋夜の胸にザクリと突き刺す。

「毒なぞ効かぬわ、こんな簡単な分解式の毒なんてよ!!」レイピアが刺さったままの緋音はそう言ってニヤッと笑う。まるで知識をひけらかす子供のように。

(でもあれ?血の味が違うような???)


しかし、

「残念」

その言葉と共に緋音はレイピアで背中を刺されていた。


突如出現した、2人目の秋夜の持つレイピアによって。


「秋夜、が、2人!?」

血を吐き出した緋音は猫のような叫び声をあげる。

緋音の足元にあったボロ雑巾みたいな姿になった秋夜はいつのまにか消えていた。

「言っただろう

君に脳みそがあるのか心配になってきたって。

感情に支配されるようじゃ、君はまだまだだね」

じゃあね、と2人目の秋夜は緋音の背中からレイピアを引き抜こうとした。

しかし

「甘い!甘いのぜェェァァァァッッッ!!!!」

叫んだ緋音のその背中から、緋音の身長をゆうに超えるコウモリのような2対の翼を恐ろしいスピードで広げたのだ。

瞬間ではあるが、音速を超えるほどのスピードで広げられた2枚の翼は鋭い刃となって秋夜の両腕を肩から切り落とす。

「ゔぁーかものがァァァァァァァ!!その気になれば切れ味抜群の翼を作り出せんだよぉぉぉぉ!!」

テメェの体、鳥の羽毟るように!最後は1センチ四方の肉片にして!!グッチャグチャのミンチにしてやるわ!!なんて叫びながら再び戦闘態勢を立て直し、両腕を突き出す緋音。

「なるほど、戦闘特化っていうのは凄いんだな……  だけどね」

殺せる!緋音が勝利を確信したその時、突如秋夜の姿が消えた。

「んな?!」

意味なく空を切った緋音は態勢を崩す緋音。その背後には傷ひとつない秋夜が現れ緋音の脇腹を突き刺した。

「残念だけど、君の能力じゃ僕の能力には勝てないのさ」


「……どうする仁、緋音やられたぞ」

秋夜に銃を向けながら六花はその引き金をいつ引くのか迷っていた。

「六花……決まってるだろ。仲間が目の前で殺られたんだ、全力で勝つ!!」

まだ死んでませ〜ん、と死体のように転がる緋音が呟く隣で、派手なエフェクトと共に刀を取り出す仁。

「いいねぇ、君たちとは戦ってみたかったけど、どうやら君たちの負けみたいだ」

ふふっと秋夜は笑って、右手に構えるレイピアをしまった。

秋夜の言葉の終わりを待っていたかのように、彼の背後にあった壁が轟音と共に砕け散った。その砕け散った壁の外に見えてきたのは黒いホバータイプの航空機。黒光りするそれは此方を睨んでいるかのようにも見えた。

「僕たちの組織は、君たち日本人とは違って行動が早いんだよ」

秋夜の今の言葉は、戦う気満々の仁たちより、即効性の毒により動けずに横たわっている鷹に向けられているように感じられた。

『エージェント、お喋りはそこまでだ。早いとこボスの元へ連れていくぞ』

航空機からの拡声音声に秋夜は、はーいと素直に返事をする。

「待て!まだ勝負は……!!」

『黙れ』

航空機からの音声と共に、航空機に搭載されていたガトリング砲が顔を出す。脅しでもなんでもなく、それは未だ戦える2人に向けて掃射された。

「クソ!」

仁は刀を使い銃弾を切っては弾き、六花は防弾式のテーブルを倒して凄まじい銃撃をやり過ごした。ここで機会があればと顔を出そうものなら、その顔はぐちゃぐちゃにされ千切れるか無くなるかであろう。

その間に秋夜は黒成と自分の体を航空機から射出されたワイヤに固定していた。

「それじゃあね〜

あ、そうだコレもう必要ないから、これは君たちにあげるよ」

秋夜はそう言ってベリベリベリッ……と右手で黒髪を引き剥がした。

黒髪の下からは、太陽の光を浴びて輝く金色の髪が現れた。

黒髪のカツラえお投げ捨てながら秋夜?は言う。

「僕たち、いや、私たちの勝ちだね!

サラダバー!諸君!!」

あっはっは、と笑う秋夜と気絶したままピクリとも動かない黒成は、繋がれたワイヤとともに航空機に回収されて見えなくなった。





徐々に小さくなっていく航空機を見ながら誰かが言った。


「アイツ……」

「まさか……」

「「女だったのか!?」」

論点はそこなのか遊部メンバー。


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