第6話~始まる世界、次元を超える者たち



「オェッ……エグいわぁ……」

公開前の小説を読み終えた黒成が、いかにも吐きそうな顔で頭を上げた。

「なんでこう、緋音が書く小説は文章もグロいし挿し絵もグロいしで、人をオェッてさせるのが得意なんだか…」

「まぁ、俺と緋音が珍しく二人で書き上げた小説だしな」

火呂は誇らしげに言う。

「ま、グロいうえにエグいのは緋音のせいだがな!!」

俺が考えてればこうはなってないと断言する火呂に緋音は「どっちにしろ最後は一緒じゃねぇか」と反発していた。

そんな公開前の小説で湧き上がる騒ぎの中、突如机に突っ伏していた奴の体がビクリと跳ね上がった。

「…?!」

そいつの真横にいた六花は、またか…と言わんばかりの目で彼を見ていた。

「また殺される夢か?」

「あぁ、いつも通りの、だ」

お前も気が休まる暇がねぇなー、と六花は再び騒がしくなった部室を眺めた。


ここは文芸部。小説を出版する部活だ。いろんな奴が小説を書いては、校内に出版している。校内の読書好きな奴等や厨二病な奴等が大喜びするほどの人気である。が、遊びまくってるだけの部活でもあるので通称『遊部』と呼ばれている。

「あっはw 仁!また殺された(夢を見た)のぜ?!」

この部活で最も背の小さい、女のクセに男のような言動をする短めポニーテール少女は挑発気味に笑う。

「黙れジェノサイド娘!」

仁は近くに置いてあった定規を緋音めがけて華麗にぶん投げる。

ベシッ

「ヴ ァ ア゛ァ゛ぁ゛ッ」

くるくると回転した定規は綺麗に緋音の額に当たり、緋音はオーバーに仰け反って叫ぶ。

もう一度言う。ここは文芸部である。非常に騒がしい。こんな事をしているが故に遊部と呼ばれているのである。

見ろ、あの淡々と作業している良い子の皆さんを!!と言いたいところだが偶にフツーに混ざって遊んでるのでなんとも言えないのがこの状況である。



キャラ紹介


文芸部部長

矢坂 仁(ヤサカ ジン)

銀髪の少年。中性的で女っぽい。

常に冷静でひ弱だが、キレると止まらない。

自分は俺。相手はお前。

左目が見えないらしく白い眼帯をしている。

身長は低めで、昔から、毎度毎度、眠るたびに仲間と自分が殺される悪夢を見る。

身長が周りより低いことを気にしていて、身長や体の細さからよく女の子と間違われる。きっと寝不足とストレスのせいだ。


骨本 六花(コツモト ロッカ)

銃マニアの少年であり射的が少し得意な感じである。

文芸部では、『不死身の傭兵〜ルトーの冒険譚〜』という小説を書いており、割と人気ジャンルである。

魔法などのジャンルは得意ではないらしい。

髪は黒茶。味噌汁にパンを浸して食べるのが好き。

身長は高め。


北村 秋夜(キタムラ シュウヤ)

ひ弱な少年。

恥ずかしがりやな為、あまり他者とは関わらないが、仲間とは楽しそうに交流している。

普通の常識人。

しかし、足が悪く、杖をついている。

ゲーム好きで、文芸部でゲームをするのが趣味。

身長は仁と同じくらい。

他の女子より女子らしいので、性別を間違えて産まれたとよく言われる。


菅野 穂玖栄(カンノ ホクエイ)

眼鏡をかけた、機械大好き男。

文芸部で、人型の機械に乗って高速戦闘する小説を書いている。一部に案外人気なジャンル。

髪は長め。たまにハサミで切るが、すぐ元に戻る。

身長は、少し低め。

閉所恐怖症らしい。


佐々倉 緋音(ササクラ アカネ)

普段は普通の少女だが。

文芸部ではグロテスクなトンデモ小説を書く。黒成は吐きそうになったりするが、面白いので続きを読んじゃう。悔しいだけどオロロンである。絵も描けるため挿し絵も自分で処理できる。

髪の色は白髪。瞳は赤味がかった茶色。左目のみ錆びた鉄のような濁りと斑点のある眼をしている。色素の沈殿異常らしい。また左目のみ視力が弱く片眼鏡モノクルを着用している。頭を含む上半身の左側に色素沈殿異常が出て赤黒い痣が広がっている。

身長は華乃と同じくらい。


佐々倉 涙音(ササクラ ルイ)

緋音の妹。

姉と違い、血が苦手。そして汚物と虫も。

絵を書くのが好きで自分の小説も書きつつ、皆の挿し絵を描く担当でもある。

髪は紫で腰までの長さ。綺麗なウェーブがかかっている。瞳は赤味がかった茶色。

身長は姉である緋音を少し越えるくらいで、首回りに首を一周するような赤黒い痣があるのをチョーカーなどで隠している。


湯川 黒成(ユガワ クロナリ)

モデルのように身長が高い、料理好きな少年。

読者として文芸部に入り浸る家庭料理部。

新作を発表前に読む権利の代わりに、文芸部に飯を食べさせる契約を結んだ。家庭料理部はもはや行ってないので実質文芸部である。

髪を金色に染めていて、赤いバンダナを巻いている。

金髪、身長はかなり高い。


広瀬 鷹(ヒロセ タカ)

物静かな少年。あまり喋らず、行動で示すタイプ。

文芸部では印刷係を務め、縁の下の力持ちとなっている。コッソリと自分の小説も書き始めているらしいが誰も見たことがない。

オバケとかそっち系の話だという噂がうわっ、なにするやめッッッ!!!

髪は黒。身長は高め。胃痛持ちらしい。というかお腹が弱いと聞いた。


悠己 火呂(ユウキ ヒロ)

サングラスと黒いコートを着た活動しない幽霊部員。いるのにはいるのだが、遊ぶだけである。

文芸部では一応、超能力を持つ者の日常を描いた話を書いている。が、たまにしか書かない。

そんなんだから幽霊部員なんて言われるんだ。案外人気ジャンルのくせに。

髪は黒。何故か明る過ぎる場所や突然の閃光を嫌がる。身長は、鷹より大きい。



サァ、この平和な世界は何を意味するのでしょうネ。

残酷で悲惨なアレは小説だけの世界だったのか、それとも本当にあった世界で、彼らは転生してここに暮らしているのか。

その真実ははこの続き、

さァ、

あなたの目で、確かめてください。


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