第3話 虎穴に入らずんば・・・

「ちょっと待て、何がどうなってるんだ?」

「何がって、君が選んでくれたんじゃない?私を・・・」

「そうだけど・・・事情がよく飲み込めない。」

そう気が付いたら、こうなってた・・・

だめだ・・・完全に、寝ぼけていたようだ・・・


「でも、いきなりタメ口ですか?」

「これは、君の希望通りのはずよ」

「僕の?」

「私の一人称、二人称は君ね・・・それからタメ口など、

すべて君の入力により、私が選ばれたの?つまり、君の希望ね」

「で、君の名前は?」

「君がつけて?」

「僕が?」

「そういう決まり、可愛い名前じゃないと、ダメだぞ」

確かに僕には、こういうタイプがいいだろう・・・


「じゃあ、四葉(よつば)で・・・」

「うん、OK.えらいえらい」

簡単だったが、いいのか?


「ところで、四葉さん」

「さんもちゃんも、いいよ。呼び捨てで」

「わかった。」

「雅昭くんは、いくつ?」

「18歳・・・って、どうして僕の名を」

「入力したでしょ?こう呼ばれたいって・・・」

確かに、アンケートにあったな・・・

「女の子に、どう呼ばれていですか?」って・・・


「時に、四葉、君は何者?」

「バーチャルプログラム」

「即答だね」

「うん」

「じゃあ、モニターからは出れないんだね」

「うん、残念だけどね。(今は・・・)」

じゃあ、四葉が出来るのは、限られるな・・・


「念のために聞くけど・・・」

「何?」

「四葉が出来るのは何?」

「君の話相手、そして癒し」

「それだけ?」

「後、ウイルスが来たらこらしめる」

「それは、助かる」

ウィルスをこらしめてくれるということは、パソコンを正常に保てるということだ・・・


「でも、もしパソコンの電源を切ったら?」

「大丈夫よ。私はもう、君のパソコンにインストールされているよ」

「えっ」

「既に私のアイコンがあるから、そこをクリックすれば、いつでもあえるわ」

「そう」

ひとつ疑問があった。


「ところで、君の声は、誰?」

「この声は、私の地声よ。これも君が望んだこと」

科学の進歩も、ここまでくれば、末恐ろしい・・・


☆虎穴に入らずんば

「雅昭くん」

「はい」

「今更だけど、私は君の理想が具現化したもの。

つまり君が、作り上げた存在」

「存在?」

「うん」

ただおかしい・・・


「でも、四葉、それなら2次元になるはず。でも、君は画面の中とはいえ3次元」

「うん」

「それはなぜ・・・」

「それは、いつかわかるわ。今は楽しみましょ」

これ以上は、詮索しないでおこう・・・


「雅昭くんは、高校生だよね?」

「うん」

「共学?男子校?」

「共学」

「彼女いる?」

「いると思う」

おそらく知っているだろう・・・

ていうか、ばれているだろう・・・


「雅昭くん」

「えっ」

「今は画面上だけど、次に私のアイコンをクリックしたら、

私は、自分の部屋にいるわ」

「部屋?」

「うん、そこで話しましょ」

パソコンを使っての、一種の衛星中継か・・・


「ところで四葉」

「何?」

「君は、僕の姿が見えてるの?」

「もちろん。メガネかけていて、一重で、鼻が大きくて・・・」

「もういいです・・・」


あからさまに怪しい・・・それはわかってた・・・

でも、いいだろう・・・

敢えて虎穴に入ってやろう・・・


そう・・・敢えて・・・

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