夢の外へ:和匡と瑞希

 目を覚ますと、ベージュのシーツが目に入る。瑞希みずきは寝返りを打って周囲を確認した。

 隣で寝ていた和匡かずまさはすでに起床しているのか、姿が見えない。

 ホワイトリネン生地のシャツとグレー染めガーゼのロングパンツを着て、ベッドから降りると寝室からリビング移動する。

 和匡はネイビーのカウチソファでくつろぎながら、コーヒーを飲んでいた。瑞希はソファへ歩を運びながら、声をかける。

「おはようございます、朝食いただいてもいいですか?」

 和匡はソファから腰をあげると、キッチンに向かう。

「おはよう、ハムエッグとトースト用意してあるよ。紅茶も淹れておくから、先に食べててね」

 和匡から盛り付けられた皿を受け取ると、ダイニングチェアに腰をかけて、「いただきます」と手を揃えた。

 キツネ色に焼かれたトーストを一口齧かじる。フォークとナイフに持ち替えて、ハムエッグを少しずつ切り分ける。黄身が割れてトロリとこぼれた。

「おまたせ、紅茶が入ったよ」

 テーブルに紅茶の入ったマグカップが置かれる。茶葉のかぐわしい香りが辺りに|漂≪ただよ≫った。

「ありがとうございます、いただきますね」

 カップを傾けて一口飲むと、苦味が広がる。目覚ましにはちょうど良い濃さだった。

「ご飯食べたら、着替えて家まで送るね」

 和匡はそう言って、キッチンへ戻ると食器を洗う。

 瑞希はそれを眺めながら、トーストを再び齧った。(終)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る