その壱。
十一月□日、午後一時十五分
今向かっているカフェは、数か月前に来たことのあるお店で、その時はケーキとカフェラテを注文した。鳥のイラストが入ったラテアートは、見ているだけでほっこりする。美味しいカフェラテといい、空間といい、ゆったりとした時間を過ごすのに最適だ。
そのお店の二号店が少し離れた場所にあるのだが、なんとそこには店舗限定のプリンがあるのだ。
画像でしかみたことがないが、きっと固めのしっかり系で、ラム酒の香るカラメルソースと甘さ控えめのホイップとの相性が抜群! ……な、気がする。個人的な見解である。
前回行ったときは既に売り切れになっていて食べれなかったので、今回は早めの時間帯で行くことにした。
――が、しかし。
店内は多くのお客さんで賑わっており、席は満席だった。メニューの置いてあるカウンターを覗くと、プリンの欄には「売り切れ」の文字が。
「ああ……」
「早いねぇ」
さすが日本人。「限定」という言葉にはめっぽう弱い。
……といったわけで、道を引き返して前回行ったお店へ移動した。変わらないシックな黒い扉を開くと、店内は賑わっていた。恐らく、二号店から流れてきたのだろう。
丁度二人分の席が空いていたので、荷物を置いてレジへ向かう。
ショーケースの中には様々なケーキが並んでおり、レジカウンターの前に置いてあるメニューにも目移りしてしまう。
前回食べたケーキは、二層に分かれたチーズケーキで、チーズの濃厚さとしっとり感、下のクッキー生地との相性が抜群だった。
今回は昼時だったこともあり、トーストとカフェラテのセットで注文する。
その間に佐々木さんとテーマパークでの順路を決めるべく、スマートフォンとにらめっこを始めた。テーマパークは某有名ランドのようにアトラクションが多いわけではない。軽くアトラクションをまわって、コラボメニューを食べて、お土産を見て買って帰るというコースに決まった。
「そういえば、
「亀のキャラクターなんていたっけ?」
「緑色のあのキャラクターでいいらしいですよ?」
「あれ蛙だよね!?」
十分ほど経ってようやくトーストとカフェラテが運ばれてきた。
分厚い茶色のトーストはこんがりと焼かれており、溶けかかったバターがしっかりと染み込まれている。紙カップで描かれたカフェラテにはイラストが描かれている。私のカフェラテには女の子と栗(?)のイラストが。そして佐々木さんにはーー
「うさぎだあああ!!」
女の子とうさぎのイラストが描かれていた。佐々木さんと言えばうさぎさん。うさぎさんと言えば佐々木さんだ。レジ前で白うさぎの雪見さんの話をしたから、店員さんが描いてくれたのかもしれない。
佐々木さんは颯爽と二台のスマートフォンを取り出し、写真撮影が始まった。様々な角度で撮影し、連写し続けている。
「佐々木さん、冷めますよ」
「でもこれもったいないから……写真撮る手が止まらないいい!!」
撮影を始めて一分ほどして、ようやく食べ始める。
プラスチックのナイフで切れ目をいれ、食べやすいようにちぎると、中がとても柔らかいことがわかる。外はカリカリ、中はもちもち。しっかりと染み込んだバターの塩気が丁度良い。そしてここに温かいカフェラテでラテアートを崩さぬよう慎重に飲めば。
「……六連勤、頑張ったかいがあった……!」
「え、六?」
幸せすぎる。こんなほっこりした時間を過ごしていていいのかと、この後バチが当たるのではないかと疑ってしまうほど、この時間に癒されてしまった。
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