その五。
〇月□日、午後二時十三分
お祈りが効いたのか、目的地である遊園地では少し晴れ間が見えてきた。
園内に入って記念撮影を終えると、真っ先に向かったのはジェットコースター。
そもそも絶叫系に乗らないうえ苦手な私が来ていい場所ではないことは十分承知しているが、皆が楽しそうで言い出しにくい。先に歩く皆を後ろから追いかけていると、
「俺、こういうの初めてなんだよねー。たっきーはどう?」
「無理です」
「ねえ、たっきージェットコースター駄目だって!」
緒方さんの問いかけに速攻で答える。それを他の三人に伝えてくれるが。
「え、大丈夫でしょ」
「そうそう! 乗ってみないとわからないって」
「…………」
とても楽しそうに返してくれた。(
そうしてどんどんと列は進んで座席に乗り込み、安全レバーが降りたその時だった。
『大変申し訳ございません。強風のため、一時運休とさせていただきます』
やけに丁寧なアナウンスが聞こえ、ホッと胸を撫で下ろす。良かった、もしかしたら今日で自分の命が終わるかもしれないと思っていた矢先だった。
「あっち動いてる!」
座席が回転するジェットコースターはまだ動いていたので、そちらに移動。二人掛けだったので
「ほら、藤棚が綺麗に咲いているよー」
「無理です無理です綺麗だけど今無理いいい!!」
回転中、泣きそうだった。
佐々木さん曰く、座席に座る人によって回転の仕方が違うらしい。現に私達の前にいた親子は尋常じゃないくらい回っていて、人数の関係により一人で乗っていた飯塚さんはゆっくり回って、カーブに差し掛かった時は佐々木さんと悠長に会話していた。
「女子同士でよかったねー」
ごもっともです。
それからもゴーカートや水に突っ込むジェットコースター、レーンに沿って車を運転するアトラクション、スタンプラリー形式のアスレチック迷路を体験した。
正直どれも生きた心地がしなかったが、一番それを感じられなかったのは、小型飛行機のメリーゴーランドだろうか。
タイミングよく席に余裕があり、一人ずつ乗車した。遠心力で機体が横になり、内側にいて安全バーを握っていたにも関わらず、外へぶっ飛ばされそうになる。ぐるぐると回る中、前後で笑い声や叫び声が聞こえたのが言うまででもない。
当然、降りた後は目を回してまともに動けなかった。皆がスタスタ歩けるのがマジ意味わからん。流石に動けなかったので壁に手をついていたら、飯塚さんが戻ってきてくれて肩を貸してくれた。本当にご迷惑をおかけしました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます