その四。

〇月□日、午前六時三十分


 一人だけ起床。外は変わらず雨が降っており、昨日よりも灰色の雲で覆われていた。

 洗面所が混むかもしれないと思い、のそのそと動き出す。顔を洗おうとしたら、昨日のボディペイントが頬にまだ残っていたことに気付き、早起きしてよかったと安堵した。

 全員で決めた起床時間は八時。流石に早いので旅行記をメモ帳にまとめる。それでも早すぎたので、持ってきていたゲーム機で冒険を始める。まだ電気ネズミ、ゲットしてなかった。

「……早くない?」

 気が付けば七時半。佐々木ささきさんが布団から顔を出してこちらを見ていた。とても眠そうだ。

「まだ早いです。もう少し寝ていても大丈夫ですよ」

「うん、そうするーおやすみ……」

 二度寝の早さよ。

 佐々木さんがまた布団に潜って二度寝を始めた三十分後、飯塚いいづかさんと亀田かめださんが起きてきた。そしてその数分後に緒方おがたさんが起きてきたタイミングで、佐々木さんも起床。「ちょっと聞いて」と改まって正座したので、姿勢を整えて彼女の話を聞く。

「こう……ソフトボールくらいの大きさの蜘蛛がいて、私とか皆が混乱しているときに、たっきーが『佐々木さん、蜘蛛は優しいんですよ。友達になれます。ほら怖くない、怖くない』って、肩とか頭に乗せて遊ばせている夢を見た」

 それを聞いて私は唖然とし、他の人は爆笑していた。田舎育ちであるものの、蜘蛛と友達になった覚えはない。

「ってか、二度寝した三十分で見たんですか?」

「見た。リアルナウ●カだった」

「ちょ」

 佐々木さんの中で私のイメージとは。


 それから全員のっそりと動き出し(動き出すまでが大変だった)、ホテルを出て目的地に向かう。

途中、近くのコンビニで朝ごはんを調達。道路を挟んだ向こう側に本来来る予定だった子と同じ名前の喫茶店を発見。誰かが写真を撮って送っていた。


「太陽ありがとう自然ありがとう雨よ止めーー!」

 自称晴れ男の亀田さんがホテルからずっとお祈りしていた。自然に感謝しても、天の恵みとも称する雨が降ってしまっては逆効果なのでは、とは思っても口に出すことはしなかった。

 昼飯は帯うどんを注文。幅が三センチ程の大きさのうどんは伸びにくいため、鍋に最適らしい。今回、唯一温かい鴨うどんを頼んだ緒方さんだったが誰よりも早くに来たにも関わらず、うどんは伸びきってドロドロになっていた。このうどん、一本の量が重くて一緒に頼んだ油揚げを半分以上残してしまった。食べてくれてありがとうございました。

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