第13話 二つの螺旋

 蛇愚地山羊人(じゃぐちやぎと)は25歳だった。

「オカキは何歳なんだよ」

「18歳っすよ」

「そうか、じゃあ大丈夫だ」

「はあ」


「道の駅ノムラ峠」そこが二人の終着点だった。

 ノムラ峠を抜ける旅人はだいたい麓のこの道の駅に立ち寄るのだ。

「よしっオカキ、ソフトクリーム食べるぞ」

「えっソフトクリームっすか」

 というオカキに芽生えだしたわずかな疑心。

「こういう所に来たらソフトクリーム食べるモンなの」

「そっか、そっすね」

 オカキのその疑心はわずか一言で消滅した。


「ほら見ろ、あのオッサンもソフトクリーム食べてるだろ」

「ほんとだ」

 道の駅のベンチではオッサンがソフトクリームを食べている。しゃれた帽子を被り、小奇麗な服を着ている紳士だ。おそらく、それなりの身分の様だ。

 二人はオッサンの前を通り過ぎて建物の中へ。

「イラッセェー」

 とレジバイトの兄ちゃんが挨拶する。


 さて、ヤギトはあのオッサンが只者ではない事を見抜いていた。

「今のオッサン、かなりの実力者だ」

「えぇ、そうなんすか」

「あぁ、ソフトクリームを両手に持ってた」

「やべぇ」


「さぁ俺達もソフトクリームだ」

「へい」

 そして、二人は薄々感づいていた事だが。

「ところでオカキ、金は持っているか」

「そういうヤギトの兄貴は」

 当然なのだが

「持ってない!!」

 二人は無一文で旅立っていた。

「じゃあどうやって食えばいいんだよソフトクリーム」

「もう諦めるっすか」

「駄目に決まってるだろ。肝心な所で諦める奴はなぁ、肝心な所で諦める様な奴なんだよ」

 とにかくヤギトはソフトクリームに執着していた。


 あなたの五百円で救われる二人がいます。

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