第11話 ブロッコリー畑の向こう側に

 蛇愚地山羊人(じゃぐちやぎと)はむさぼる。

 ゾルフバーグ村では討ち入りお疲れさま会が開催されていた。


 祝賀会の会場は村民運動ホール。テーブルには山盛りのブロッコリー。そして、なんとカリフラワーも並んでいる。

「すげぇよ見てくれヤギトの兄貴。こんなにも本物のカリフラワーですぜ」

 とオカキも大興奮。

「ほぅ、それはすげぇな、美味しそうだぜ。オムライスとか食べたい」


 それから、ブロッコリーとカリフラワーの花畑での宴は深夜まで続いた。

「さあみんな、お待ちかねのビンゴ大会じゃよ」

 村の長老が持ってきたの熊の剥製の口の所から玉が出てくるタイプのビンゴマシン「グリザリンX-Ⅱ」だ。

「今日は素敵なプレゼントを用意した。ブロッコリー10㎏、ピザ割引券、ゾルフバーグ村オリジナルカレンダー、木彫りの裸長老像、ブロッコリーの漬物などの豪華プレゼントの他にもシークレットプレゼントもあるぞ」

 もう一生分ブロッコリーを見た気がしたヤギトだった。


 さて、この蛇愚地山羊人はくじ運は強いらしい。

「ビンゴだ」

「おめでとうヤギト殿。三番目にビンゴになった君にはシークレットプレゼントが当たったぞ」

「やべぇどんなブロッコリーが来るんだよ」

 だが長老が持ってきたのは古びた靴だった。

「なんだコレ。あまり旨くはなさそうだな」

「これはこの村に古くから伝わる靴だ」

「ほぅ、それはすげぇな」

 もしかして、廃品をくれるほどここは貧しいのか、という疑惑にヤギトは囚われた。だが貰えるものはとりあえず貰うのがヤギトだ。

 あとオカキはブロッコリーの漬物が当たった。


「それでヤギトの兄貴はこれからどうするんです」

 オカキがずっと気になっていた事だ。

「俺か、そりゃあ帰るけどな灘区に」

「でもナダクは確か」

「あぁなんか変な奴らがいるんだろ。そんなん前からでしょ。俺の友達とかいるしな。それに外人とかヤクザとか、あと変なおっさんだってよぉ沢山いるんだよ」

 ヤギトは大して気にしていなかった。

「俺も……俺も連れていって欲しいっす」

「あぁ?」

「俺はこの村しか知らないし、馬鹿だし。だから俺は村の外の世界を見てみたい、兄貴の住んでる街を見てみたいっす」

「いいんじゃねぇの、別に」

 だが黙ってなかったのは長老だ。

「オカキよお前はまた」

「うるせぇ、ブロッコリー星人は黙ってな」

「はい」

 という軽いノリでオカキはヤギトに着いていく事になった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る