第7話 妖術講習

 蛇愚地山羊人(じゃぐちやぎと)は四種のチーズを征した。

 ピザ屋に立ち寄ってから隣の村の村長宅に行ったのだった。


「どうも宅配ピザ屋じゃコラァ、お前の死で償え」

 とか言いながらヤギトは村長宅の扉を蹴破る。家の中では既に村長が柱に貼り付けにされていた。

「大丈夫だ、意識はまだありそうだ」

 ヤギトは安堵した。


「来おったな曲者どもめ」

 それから、戸棚の中から怪しいおじさんが現れた。

「あああっ」

 森さんはその姿に動揺を隠せない様だ。森さんは少しおじさんだが怪しいおじさんはもっとおじさんだ。

「アインカイツ様ぁ」

「このおっさん知り合いか」

「この方は隣の村の妖術の先生。俺達より遥かに格上の妖師だ」

「なるほど、確かに怪しいな」

 ヤギトは少しずれた納得をした。


「ずいぶんと私の生徒をイジメてくれたらしいな」

 アインカイツの圧倒的な雰囲気、その場の人間はとりあえず気圧された。

「イジメはなかった。あれは男の決闘だ」

 ヤギトは言い切った。

「妖師の怖さを知らんのだね君は」

「ああ、おばけとかの方が怖いな」


「では君にも特別講習をしてやろう。妖術の源は妖素と呼ばれるエネルギーだ」

 アインカイツがそう言うと全身が赤い光に包まれ、それは炎の様に揺らぎだした。

「君にも見えるだろう。これは妖素が目視出来るほどに高まった状態。この炎を妖値炎(ようちえん)と呼ぶのだ。これは妖素の量、つまり妖値がある程度高くないと出来ないのだよ」

「くっなんて妖値なんだ」

 という森さんの絶望的な反応からヤギトは色々察した。

「そして、この妖値炎を実際の炎に変える」

 アインカイツがそう宣言すると、妖値炎が体から離れ、紅蓮の玉となってヤギトを襲う。

「うわっあっちぃ」

「どうだ、素人とは比べ物にならんだろう。次は直撃させてやるぞ」


 ヤギトは身構えた。そして、アインカイツは服を脱ぎ始めた。

「フフフ、面白いモノを見せてやろう」

「いや、全然見たくないんですけど」

「高火力の妖術では自分の服に燃え移らないように、あらかじめ服を脱ぐのが基本だ」

 アインカイツの妖値炎がさらに大きく渦巻く。

「ちょっと待てって。そんなの室内でぶっ放したらよぉ、俺達みんな照り焼きチキンになっちまうぜ」

「確かに」

 確かに!!


 みんな隣の村の村長宅から出た。

「さて気を取り直して」

 といういい所でだ。

「コラー貴様ら、何をやっとるか」

「むっ」

 現れたのは民兵二人組だ。

「いやあこれはこれは、この無知な猿パンジー共に特別講習を」

「黙れ変態共、お前ら全員ムショ送りだ」

「しまった服を着忘れていた」

 みんな捕まってしまった。

 一体どうなってしまうのか。

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