小休止に

「……」

「……」

無言で紅茶を口にする。

対面にいるベリルも話そうとはせずティーカップと受け皿を上品に持ち目を瞑っている。

「ありがとう」

重い口を開くと彼女の瞼も開いた。

「何がです?」

何が……そんなの決まっている。

「僕を助けてくれている、僕は、ベリルがいなかったら……」

「何を言っているんです?私は何もしていません」

少し冷たい事を言ってはいるが、僕は彼女の優しさを再び感じていた。


「あなたは色々思いつめ過ぎなんです。」

ベリルはじっとこちらを見つめている。続けてこう言った「ですから、もっと自由にしてくださっていいんです。どちらかと言えば、働いていない私の方があなたに感謝するべきなのです。」

ベリルだって、自分のことは放ったらかしで人にばかり気を使っている。

いつの日か、雨が降る日に自分の服が汚れようとお構い無しに泥だらけの子猫を抱えて帰ってきた。

またいつの日か、来客の子供がベリルの思い出の品である皿を割ったことがあった。

その時も彼女はケガはないかと子供のこと心配し、謝る子供に「これはただのお皿です。どこにでもあり、替えがある。でもあなたはどこにもいない。謝ることなんてないんですよ」こういったことをよく覚えている。


本当に、彼女は優しい……。


「お茶のお代わりは?」

ベリルは僕のティーカップを見て言った。

「頂いていいなら」

「お持ちしますね」

彼女は席を立つと机の上のポットを手に取り、空のカップに紅茶を注ぐ。

「ありがとう」

再びお礼を言うと今度はどういたしまして、と返してくれた。

目の前が湯気によって少しボヤけている。

熱そうだな、と思いながら彼女にならってティーカップと受け皿を手に取った。

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