第13話 ただいまの意味
「ただいま」
なぜお前が言うんだ
本当にあいつは
うちに帰ってきた
俺より先に家に上がる
謙虚さは全くない
やはり空木の花言葉は
こいつには当てはまらない
俺の家は二階建ての一軒屋
一階 1LDKにトイレと浴室
二階 フローリングの部屋が三つ
あいつは一通り見て回り
「ホントにひとりなんだね」
と、床のバスタオルを
浴室の洗濯機に入れに行った
俺は冷房で七月の蒸し暑さを追いやり
キッチンでお湯を沸かす
安いティーパックの紅茶の香り
この場にはふさわしい
テレビの前 四角いテーブルにカップを置く
あいつは座って
「意外だな」とリビングを見渡しながら紅茶を飲んだ
「何がだよ」と睨みつけて俺も一口紅茶を飲む
「おもてなしできるんだね」とこっちを向いた
「意外で悪かったな」と俺は目を閉じてまた一口飲む
紅茶の香りが少なくなっていく
俺はテレビに映るモノクロの俺と向き合っていた
ふいに
「僕、ここに住む」と立ち上がってあいつは玄関を出た
宣言されたゴシック体
紅茶の香りを少しだけまとい
リビングに浮いたまま
十分経っただろうか
あいつと青のキャリーケースは
家に戻った旅人のように
二階に上がっていった
俺は断れないのか?
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