第10話 ひとりとは

いつもより二本早い電車

あいつはいない

ひとりで通学する朝

教室のざわめきが少ない


昼休み いつものように

ひとり 机で

お決まりの日替わり弁当

いただきますと空白に綴る


その時

あいつが教室にやってきた

めずがしい

が 察しは付く

俺はあいつを

教室から強制退去


誰もいない 渡り廊下

もうすぐ昼食を終えた生徒だらけになる

「なんだよ」

わかっているが聞く

「なんで先に行ったんだよ」


予想通りの言葉に

「どの時間に乗ろうと俺の勝手だ」

予定通りの言葉が

なんで俺自身に返ってくるんだ


「楽しいと思ってたのは僕だけだったのかよ」

空木は地面に一文字ずつ落とした

行く先不明な心を混ぜて


「悪かった。もうしない」

それだけしか言えなかった

「いえ、もういいんです」

それだけしか言ってもらえなかった


帰りもひとり電車に乗る

俺が選んだのは

自由ではなく

孤独という暴力だった

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る