大神林の奥にて さらなる言い合いと門
また一刻(前世でいう一時間)が過ぎた。なんで過ぎたかと言うと、四体と
しかも誰かが一つの事を言うと他が追従したり派生して際限なく続いていく。というか戦いはどうし……いや、戦いに発展してない事は歓迎するべきだな。僕が照れを無視すれば丸く収まるんだからそれで良い。
『ふむ……』
「世界樹、どうかした?」
『あの子をお前さんに任せたのは正解じゃったと思ってのう』
「どういう事?」
『あの子が我の一部だった時でも、我が
「まあ、一部だったからそうだろうね」
『じゃが、あくまで
「うーん……一長一短だと思うよ。僕と行動するようになって魔石っていう面倒くさくて厄介な連中と関わる事になったからね」
『あの子にとっては自由に言い合えるという良い結果になった事が全てじゃよ』
「そういうものなんだ」
『そういうものじゃ……な?』
僕と世界樹が静かに話してると四体と
「ガアッ‼︎」
「ブオッ‼︎」
「アナタハ何モワカッテイマセン‼︎」
「…………ホントウニイイノハソレジャナイ」
『何でですか‼︎ 一番は何気なく空を眺めている時に決まってます‼︎』
「ガ、ガアッ‼︎」
「ブオブオッ‼︎」
「違イマス‼︎ 一番ハ森ノ中デ風ヲ感ジテイル時デス‼︎」
「…………モリノナカデオトヲキイテルトキモイイ」
…………理解したくない。理解したくないけど、これは僕のどういう時が一番良いかを言い合って対立してるのか?
『ふむふむ、本当に愛されておるのう』
「いくら愛されてるって言われても、騒ぎの原因にはなりたくないよ」
『それはそうじゃが、お前さんは騒動を止めれる力を持っておるから愛されても大丈夫じゃよ。周りから好かれる事で有頂天になり、自ら騒動を広げるものもおるからのう』
「……
『騒ぎの芽は、どこにでも生まれる可能性がある。もちろん種族問わずにじゃ』
「そうなんだ…………お」
四体と
『状況が動き出すようじゃな』
「……
『待つんじゃ』
「うん? どうかした?」
『切り札はあるに越した事はないじゃろ?』
「もちろんそうだけど、時間的に
『お前さんには、これを渡しておく』
世界樹が言うと僕の頭上にあるものが降りてきたので両手で受け取った。すると、それは金色に光りながら形を変えて僕の右手を伝っていき、僕の右上腕の服の袖で隠れる部分で腕輪となる。…………右手の動きに支障はない。
『それはいざという時のために、ただの腕輪とした眠らせておくと良い』
「…………ありがとう。これを使わないといけない時は確実に最悪の中でも、より最悪の時だね」
『事態解決のためには迷わず使うんじゃぞ』
「わかった。あ、帰る方法で一つ聞きたいんだけど良い?」
『何じゃ?』
「黒の村まで森を縮めて大丈夫?」
『…………まあ、今回は許可を出そう』
「ありがとう」
僕は座っていた世界樹の根もとから離れて、大木になっている
「サムゼンさんが
『それじゃあ私も戻りますね。…………決着はまた後日に持ち越しです』
「
僕の詠唱と同時に黒の村の門がボンヤリ見えてくる。これは単なる映像が見えているわけじゃなくて、黒の村の門という実際にある景色を世界樹の根もとと隣り合うように距離と空間を縮めて呼び寄せたものだ。…………安定しないな。黒の村なら僕と一番関わりが深いし
『やり始めたなら完遂するのが最も安全。ここは助力させてもらおう』
「自分で始めておいてうまくいかないのは、かなり情けないけど助かるよ」
世界樹と
「
この詠唱で隣り合うだけで繋がってなかった空間に道ができ、さらに門を開く事で行き来が可能になる。四体を見ると、すでにいつでも移動できる体勢になっていた。僕は世界樹へ振り向く。
「いろいろありがとう。このお礼は絶対にするからね」
『気にせずとも良い……は、納得できないみたいじゃな。それならばお前さんの無理のない範囲のお礼を期待しておこう』
「うん、楽しみにしてて」
『お前さんには これからの無事を祈るとしよう。それと我の力がいるなら呼ぶんじゃぞ』
「わかった。その時が来たら遠慮なく。またね」
僕と四体は
…………変な余波や反動が起きないよう慎重に作業したから時間はかかったけど無事に元の景色に戻った。念のため周りの植物達に変な感じはしないか聞いたり、周りを徹底的に調べても異常はない。よし、これで問題ないね。サムゼンさんを迎えに行こう。
「ヤート、待て‼︎」
「うん? ラカムタさん、どうかした?」
「どうかしたじゃねえ‼︎ 今のは何だ⁉︎ どうやって戻ってきた⁉︎ どこに行く気だ⁉︎」
「今のは世界樹と
「あ、う、お、……ないな」
「みんなは聞きたい事ある?」
ラカムタさんは、どういう表情をすれば良いのかわからないって感じで百面相をしていた。みんなに聞いてみても、ものすごく複雑そうな表情をするだけで何も言ってこない。…………少し待ってみたけど、誰も何も言ってこないからサムゼンさんの迎えに行く事にした。みんな、どうしたんだろ? 何か珍しい事があったのかな?
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
◎後書き
最後まで読んでいただきありがとうございます。
注意はしていますが誤字・脱字がありましたら教えてもらえるとうれしいです。
感想・評価・レビューもお待ちしています。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます