黒の村にて 魔法の実演と名前
僕達は植物達に誘導してもらいサムゼンさんと合流できたので、お互いの近況を話しながら黒の村へと戻った。さて、教団への対応はどうなったんだろ? ミックの渡したリザッバの首飾りが、交渉とか何かしらの役に立ってれば良いな。
僕達は村に到着する。サムゼンさんが早速の話し合いだと意気込んでたけど、村のみんなは僕と四体が
「なにやら普通ではない様子だが、何かあったのですかな?」
「ああ……、いや、俺達もどう受け止めたら良いのかわからないんだ……」
「…………ヤート殿だろうか?」
「そうだ……」
「心中お察しする」
…………二人ともひどくない?
「ラカムタさんは……まあ、いろいろ僕の派手な魔法を見てるから言われても仕方ないけど、何でサムゼンさんも共感してるの?」
「王城からでも見えた深緑色の光。王城勤務の魔法官にあれを再現する場合に、どれほどの魔力が必要なのか聞いたみたのです」
「そうなんだ。それで魔法官は何で答えたの?」
「一流と呼べるもの数百人で数ヶ月単位の準備が必要だと言われました。ヤート殿はそれだけの魔法を独力で発動させたわけです。魔法官達は愕然としてましたよ」
「あの魔法は植物達の魔力を使わしてもらってるし制御は
ラカムタさんとサムゼンさんは、僕の発言を聞いて気まずそうな表情になった。
「あー……、言い方が悪かったのは確かだ。すまん」
「ヤート殿、申し訳ない……」
「わかってくれたら、それで良いよ」
「ところでヤート殿は今回どのような魔法を使ったか聞かせてもらっても?」
「わかりやすく言うと距離を無くす魔法だね」
「…………詳しく聞いても?」
「これから起こりそうな事の対策のために
「空間を縮めて隣り合うように繋げる……?」
「見せた方がわかりやすいかな。大きいたらい二つと適当な台があったら貸してくれない?」
すぐにみんなが大きなたらい二つと台を用意してくれた。僕は台の端と端にたらいをそれぞれ置き腰の世界樹の杖を触れる。
「それじゃあ実演するね。
腰に巻きついている
周りを囲んでるみんなの驚いている顔を見たら、なんか手品のショーでもしてる気分になるな。僕が何度も手を出し入れしてると、兄さんが恐る恐る近づいてくる。
「ヤート……、俺もやってみて良いか?」
「うん、たらいを激しく動かすとか壊す以外なら好きに触ってみて」
「あ、ああ……」
僕に促されて兄さんは手を出し入れ始めたので、一つ提案してみよう。
「兄さん、そのまま僕と握手してみる?」
「……おう」
「それじゃあ、握手と」
「変な感じだな……」
「たらいの大きさを考えると、そのまま身体ごと通り抜けられるよ」
「え……」
「見本を見せた方が良い?」
「い、いや、見てろ‼︎ はあっ‼︎」
兄さんは、ものすごい気合いを発して高く跳んだ。…………そこまで力まなくても、こう、またぐ感じで良かったのに。まあ、兄さんらしいと言えば兄さんらしいかと見守っていたら、兄さんは高く跳んだ後の落下速度に乗って一気にたらいに入り、もう片方のたらいからスポーンと飛び出てきた。
「うおおお‼︎ 何だ⁉︎」
「兄さん、逆さになって飛び出しただけだから体勢を立て直して」
「お、おお、こうか」
水平に置いてる片方のたらいに入ると、もう片方からは上下が逆になるって言っておけば良かったな。すぐに兄さんは自分の状況を理解して体勢を制御して台に着地した。
「兄さん、ごめん。説明不足だった」
「気にすんな。それより下に落ちたはずが、たらいから出たら上に登ってる。これは面白いな」
兄さんが満面の笑みになってるのは良いとして、ここまで気に入ってもらえるとは思わなかったね。あと嬉々としてはしゃいでる兄さんを見て、他のみんながジリジリ近づいてくるという反応も新鮮だ。でも、サムゼンさんとの話し合いもあるから、兄さんがたらいから離れた一瞬を狙って魔法を解除した。
「あ‼︎ ヤート……」
「サムゼンさんの話を聞かないといけないからね。話を聞くとか他の事をしながらやるには、まだ難しいんだ」
『それなら私に任せてください‼︎』
唐突に
「僕の代わりに魔法を発動できるの?」
『うう……、せっかくかわいい見た目になって華麗に出てきたのに無視ですか……。いえ、負けません‼︎ 次こそは
「顔に出てないけど一応驚いてる」
『…………本当ですか?』
「うん」
『それなら成功です‼︎』
「ヤート殿……、そちらの方は?」
「この子は
『
「こ、これは、ご丁寧に。私はサムゼンというものだ」
『はい、よろしくお願いします』
「う、うむ……」
おお……、サムゼンさんが
『
「あー、たぶん
『はい‼︎ その通りです‼︎ ……あの、どうですか?』
「違和感はないし、自分の事を表してる良い名前だと思うよ」
『ありがとうございます‼︎』
僕の返答がシールの言ってほしかった事らしく、シールはパァッと嬉しそうに笑った。うん……、どんな存在・種族でも笑顔は良いな。
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◎後書き
最後まで読んでいただきありがとうございます。
注意はしていますが誤字・脱字がありましたら教えてもらえるとうれしいです。
感想・評価・レビューもお待ちしています。
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