幕間にて 白の少年との会話と成長した自分の実感
前に青の村がある方角で、あの空を貫く緑の光線を見た時あいつの顔が浮かんだけど、気のせいだと思った。次に
それでも自分の目で確かめたいと思って、ばあちゃんや赤のみんなに内緒で
「クトー、どこに行く気だい?」
「あいつが、どれくらい強くなってるのか確かめに行くだけだ」
「……ふむ、良いだろう。あたしの勘にもビリビリ来てるし行こうかね」
「良いのか⁉︎」
「ただし、ちゃんと村の奴らに言ってからだよ」
「……わかった」
たぶんイギギに何か言われるだろうなと思っていたけど、ばあちゃんと同じく頭をつかまれグリグリ揺らされる。クッソ、これを昔からやられて首が痛くなるんだ。力加減ぐらい覚えろよ、おっさん。
ばあちゃんといっしょに
「
「…………ああ、それならヤート殿の魔法の影響ですよ。どうやら植物の力が活性されて、さらにヤート殿の魔法で大量の魔力が周辺一帯に撒き散らされた結果らしいです」
あいつの魔法は地形まで変えるのかよ……。ばあちゃんやイギギのおっさんでも、ここまで大きな変化は起こせねえ。
「ヤート殿によると、他の植物から力を借りたおかげだと言って謙遜していました。それだけの力を借りれた事がすでに偉業と言えるのですが……。それとヤート殿の魔法で生まれた森の植物は、ヤート殿のお願いを聞いて動いていたとだけ言っておきます」
「……あたしらの想像以上の成長をしているみたいだね」
ばあちゃんが顔を引きつらせるところを初めてみた。俺だって交流会の時よりは成長してる……はず。早く今のあいつとの差はどれくらいなのか試したい。
それからの俺は、あいつの姿をした植物に勝負を挑みそうになったり、交流会の時よりもデカくなっている
それに青の当代
どういう理由かはわからないが、あいつの仲間の人型の植物二体がにらみ合いを始めるという見ている全員が何もできない状況になった。そんな中、あいつが現れる。あいつは三組のにらみ合いを観察した後、まず二体の人型の植物に話しかけた。
そんな事をして大丈夫かと思ったが、二体の植物は自分達の主張をあいつに言っていく。…………はあ? あいつの姿をしてほしくないとあいつの姿をしていたい? そんなの、どっちかしか叶えられないだろ。俺以外にも、そう思った奴がいたらしくうなり声が聞こえる。
あいつはどうするのかを見ていると、あいつは少し考えて二体の植物に提案をした。…………なるほど、自分の最大の特徴の白と姿形をわけて考えたのか。しかもいざという時の切り札という位置づけを与えて納得度を増している。さっきとは別の意味で周りの奴らも、うなるくらい上手いな。
次のあいつの行動を想像してみる……。たぶんほっとくとシャレにならないばあちゃん達の方へ行くか? ……当たった。やっぱり、ばあちゃん達の方へ行ったな。だが俺の想像力だと、この先がわからない。さっきの二体の植物みたいに何か提案をするのか?
うん? あいつが急に後ろへ振り返った。…………青のじいさんと何かやりとりをしてるみたいだな。あの掌を相手に向けるのに何の意味があるんだ? まあ、そこは後であいつにでも聞けば良い。お、あいつが、ばあちゃん達の方に向き直って考えだした。…………ちょっとあいつがどうするのかワクワクしてきたな。
は……? 足が速いか何て誰も気にしないだろ……。あ、なるほど意外な質問をしてばあちゃん達の気をそらしたのか。……うげ、競走の二文字は、ばあちゃん達が本気になるから言うなよ。…………いや、そうか、勝負の内容を足の速さに限定できたから、これで良いんだな。
ばあちゃん達が村を出ていき、青と
かなり広場の雰囲気が軽くなった中、あいつがゆっくりとイリュキン達へ歩いていく。……妙に足取りが重いな。何かを警戒してるのか? 警戒する理由がわからずジッと見ていたが、あいつがイリュキン達に近づいた時に、チムサが飛びかかって理解した。
そういえばチムサはこれと決めたらまっすぐ……というか当たって砕ける奴だったな。俺はあいつとチムサの間に割り込もうとしたが、あいつの無駄のない回避やイリュキン達と話せる余裕を見て思いとどまる。…………あいつ、あんなに動けたのか。成長してるのは俺だけじゃないというのはわかっているがモヤモヤする。
……いや、俺は俺の成長を見せれば良いだけだな。そのために、またあいつに飛びかかろうとしているチムサの前に立ち塞がった。……パッと見、チムサはすでにキレてるみたいだが、どうでも良いな。俺に警告をした後、土で拘束をしてきたが本当にどうでも良い。さっさと土を砕いてあいつと向き合う。
「…………久しぶりだな」
「交流会以来だから、そうだね。それで僕に何か用?」
「あの時と同じだ。お前に決闘を申し込む」
「なんで?」
「あの時の無様な自分を超えるためと、お前に俺がどれだけ成長したのか示すためだ。お前に決闘を受ける意味や得はないが受けてくれ」
俺との会話に乗ってくるのかっていう不安をよそに、あいつはあっさりとごく自然に俺と話し始めた。
「決闘を受けるのは良いんだけど、それって今すぐ?」
「……お前は、そういう奴だったな」
あいつが迷わず力みなく決闘を受けたのと、前と変わらずあいつにとって決闘の価値は高くないという事に自然と笑えてくる。
「飯を食べた後の落ち着いた時で頼む」
「わかった。もう一つ良い?」
「ああ」
「後々尾を引きそうだから後ろの子と、ちゃんと話し合って」
振り向くとチムサが俺を射殺しそうな目で見ていた。…………チムサに用はないな。
「あいつは気しなくて良い」
「そんなわけないでしょっ‼︎」
叫んだチムサに後頭部を殴られても、俺の感情は動かない。前の俺だったら全力でキレてたはずだ。とりあえずチムサに事実を言っておくか。
「うそ……」
「おい、チムサ、負けた奴は大人しく順番守れ。お前は俺の後だ」
「は⁉︎ 私のどこが負けてるっていうのよ⁉︎」
「自信満々に発動させた土の拘束は、俺にまったく効いてなかっただろ? あと俺への打撃もな」
「それは……」
「わかったら下がってろ‼︎」
「キャア‼︎」
これだけ俺との差を実感させれば、もう無駄に攻撃してこないだろう。後は話を邪魔されても嫌だから広場の端にチムサを投げた。
「投げる必要あったの?」
「この場だと俺の方が先だっていう宣言みたいなものだ」
「そういう事なら意味があると言える……のかな?」
「とにかくだ‼︎ あー、ヤートって呼んで良いか?」
「好きに呼んでくれて良いよ」
「助かる。俺の事も好きに呼んでくれ。今日、ヤートへの用件は勝った俺が最優先だ」
「うん、朝食を食べてからね」
「待ってください」
「私も待ってほしいね」
ヤートに、あっさりと名前呼びを許されたのは少し嬉しかったが、喜ぶ間もなくイリュキンと黒の奴が俺とヤートの話に加わった。
「リンリー、イリュキン、どうかした? あ、二人ともおはよう」
「ヤート君、おはようございます。私はクトー君に用があります」
「ヤート君、おはよう。私もリンリーと同じだよ。クトー、聞き捨てならない事を言ってくれるね」
「あ? どういう意味だ?」
「今日のヤート君への用件は勝った君が最優先という事だよ」
「そうですね。まだ私達に勝ってもいないのに的外れな事を言わないでほしいですね」
「……良いぞ。文句があるならかかってこい」
「絶対に譲りません‼︎」
「今日のヤート君への優先権は渡さない‼︎」
「えっと……僕の意思は?」
前に決闘で負けたヤートと話せた。チムサに殴られても冷静だった。よし、俺は成長してる‼︎ これは間違いない‼︎ だったら勝つのは俺だ‼︎
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
◎後書き
最後まで読んでいただきありがとうございます。
注意はしていますが誤字・脱字がありましたら教えてもらえるとうれしいです。
感想・評価・レビューもお待ちしています。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます