黄土の村にて 白の少年と赤の少年
翌日、たっぷり食べて寝て体力を回復して頭痛と疲労も解消した僕は、
「フンッ‼︎ ウラアッ‼︎」
クトーは前の交流会の時より強くなってるね。兄さんや姉さんと戦ったらどっちが勝つのかを考えつつクトーの攻撃を事前に界気化で感知して避け続ける。……昨日、格上である赤の
「チクショウッ‼︎ ここまで当てられないのかよ‼︎」
自分で言うのも何だけど、クトーが荒れるのもしょうがないと思う。なぜなら僕はクトーの攻撃を、それほど動かずに避けているからだ。ちょっとクトーの事が気の毒になるほど完全に感知できていて、今も顔を狙ったものは上体を反らして避け、蹴りはクトーの足の長さより半歩下がり服にもかすらせない。…………そろそろか。
「オラアッ‼︎」
クトーが僕に避けられ続ける状況を打開しようと、今までで一番鋭い左突きを僕の胸へ放ってきた。なので僕はクトーの左突きが当たる直前に、右足を軸にして左足を動かし身体を回転させる事で避け、さらにクトーの身体を進行方向へ押して体勢を前のめりで地面に手を着くように崩す。
「ウオッ‼︎ ……諦めてたまるか‼︎」
誰だって動いてる途中で自分の予想してない力が加わったら、相応の実力がないと姿勢を保つのは難しい。クトーは地面に着こうとしてる手で、地面に強く叩く事で自分の身体を浮かした後に空中回転で体勢を整え着地した。
「まだま……、えっ?」
「僕の勝ちだね」
「なっ⁉︎」
クトーが着地して僕を探す時には、すでに僕はクトーの後ろに回り込んでいる。そして僕を見失っているクトーの後頭部に触り勝利宣言をした。
「待て‼︎」
僕がラカムタさん達のところに戻ろうとしたらクトーに呼び止められる。振り向くとクトーは触られた位置に立ったままだった。
「クトー、何?」
「……もう一戦、頼む」
「良いよ」
「すまない……」
黒の村でのポポ達の事を考えたら、こういう展開になるかもって思ってたけど本当になったね。さすがに疲れて動けなくならまではやりたくないから、あと二戦したら諦めてもらおう。
その後、一戦目は僕がクトーの打撃をかい潜ってクトーの眉間を確実に触る事で僕の勝ちとなり、二戦目は僕に投げられ地面で仰向けになっているクトーの顔のすぐ横に僕がダンッと足を落として僕の勝ちになった。僕はクトーを起こしながら聞いてみる。
「まだ決闘を続けないとダメ?」
「いや、今の俺だとヤートには勝てないとわかったから大丈夫だ。……ただ一つ聞いても良いか?」
「うん、僕に答えられる事なら答えるよ」
「俺は交流会の時と比べて、今の俺はどうだ?」
「強くなってるよ。きっと兄さんや姉さんと良い勝負すると思う」
僕の発言を聞いて僕とクトーの決闘を見ていた兄さんと姉さんから魔力が溢れてくるけど無視しておく。
「それなら何で俺はお前に何もできない……?」
「単に僕の戦い方との相性だね。まあ、相手の思考を感知できる存在は、ほぼいないだろうから今の僕との勝敗は気にする必要はないと思うよ」
「負けは負けだ‼︎」
「……クトーがそう思うなら、それで良い。もし、僕に勝ちたいならグレアソンさんくらいに強くなるか、グレアソンさんや僕の父さんみたいに考えずに動けるようにならないと無理だっていう事だけは言っておくよ」
「ああ、それはわかった。今の俺とヤートの差が本当によくわかった。宣言しておく。俺は必ずヤートに追いつくからな。そして絶対にお前を倒すぞ‼︎」
「そっか、楽しみにしておくよ」
昼食になり、みんな集まって広場で食事をしている。そんな時ふと疑問が頭をよぎったのでラカムタさんに聞いてみた。
「ラカムタさん、グレアソンさん達とイーリリスさん達が僕の魔法を見て何かが起こってると感じて
「ああ、それならすでに
「そうなんだ」
「ヤートにしては珍しいな。
ラカムタさんに言われて見回してみたら確かに
「うん、わからなかった。それで、その二人はいつ出発したの?」
「昨日のヤートが食事や説明を終わらせて寝た後だな。ヤートの状態が確定してからじゃないと、村の奴らにヤートの報告ができないだろ?」
「…………僕よりもリザッバの事が重要でしょ」
「あんな奴の事は、ヤートが見つけてヤートがぶっ飛ばしたで良いんだよ。それよりもだ。今はヤートの
「……たぶん大丈夫だと思うけど、今後も何があるかわからないから、そうさせてもらうね」
僕は食後に手製の薬草茶を飲み四体にあいさつをした後、明るい内から眠りに着いた。……明日こそ散歩できると良いな。
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◎後書き
最後まで読んでいただきありがとうございます。
注意はしていますが誤字・脱字がありましたら教えてもらえるとうれしいです。
感想・評価・レビューもお待ちしています。
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